悪夢 ページ48
下の階に向かおうとする一成を止めた三角。
不思議そうに、だが不安たっぷりといった顔でこちらを凝視する二人の視線を感じつつ、三角は魘されている速水を見つめる。
「う......ぐっ......!」
胸元の布団を掴む手は固く握られていて、その姿は見ているだけで痛々しい。
(A......)
眉根を寄せ、それから三角は決心したようにゆっくりと手を伸ばした。
大きな手のひらが、眠る速水の額へと乗せられる。
(大丈夫)
速水にも、そして自分にも言い聞かせるように。
その手でゆっくりと優しく髪を撫でる。
ーーーその手つきは、天馬が疑心を抱くほどに慣れていた。
****
今から数日前の、速水が203号室に移動してきた日。
事件は起きた。
「ぐ......ぅ、っ」
「......A?」
突如頭上から聞こえてきた相方の呻き声に、三角の意識は浮上する。
初めは気の所為かとも思ったが、徐々にその声は大きくなって。
「A、っ!!」
反対側で眠る彼のその表情から、ただ事でない事はすぐに理解できた。
眠りにつく数時間前は普段の速水となんら代わりがなかったというのに。
こんなにも苦しそうな彼は過去一度として見た事が無い。
「っ......」
このまま放っておけば、自分の叔父みたくなってしまうんじゃ無いかとすら思えて。
「A!A!!」
恐怖で浅くなる呼吸にも構わず、懸命に反対側のベッドに渡るとその肩を揺すった。
こういう時の知識にめっぽう弱い三角には、無理やり起こす以外の術が分からない。
とにかく今は速水と一刻も早く言葉を交わし、無事な姿を見て安心したかった。
そして起こし続ける事数分。
「う......」
「っ!A!」
どうやら気がついてくれたらしい。
「み、すみ......?」
弱々しくも名前を呼ばれ、三角は詰まり切った息を吐き出すと同時に力が抜けるようにしてその身体に抱きつく。
「よかった......!」
そのまま心の内を声に出せば、速水は不思議そうに眉を寄せ、それから自身が大量の汗をかいている事に驚いた。
何かに気づいたようで、ハッとしたように抱きつく三角へと視線を落とす。
「三角、もしかして俺......」
魘されてた?
控えめに聞くと、胸元に顔を埋めた三角の顔は縦に動いて。
肯定の意を表すそれに、全てを理解した速水は困ったようにため息を吐いた。
その様子を見るに、どうも今回が初めてという訳ではないらしい。
「......ごめん、三角」
謝りながら、震える三角の頭に手を乗せる。
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ノルン(プロフ) - 更新お疲れ様です!待ってました!!今回も物凄く面白いです!(語彙力)三角の行動に心臓がキュッて締め付けられました 次の更新も楽しみにしてます! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 杏仁豆腐さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。不在中に二度も待機コメントして下さって感謝以外の言葉も出ません・゚・(つД`)・゚ 本当にありがとうございます!! (2019年1月25日 20時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - うわぁぁぁ!!続きがメッチャクチャ気になりますぅぅぅ!! 次の更新待ってます!! (2019年1月25日 11時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - ラッキーさん» 今更ながらですみません。コメントありがとうございます!たまに自分の稚拙な文章力に落ち込んでたりするので、そう言って頂けるのはすごく嬉しくてやる気になります.....!また再開して行くつもりですので、今後もよろしくお願いします(´▽`) (2019年1月24日 16時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 支杞さん» コメントありがとうございます!大っっ変長らくお待たせしておりました。今更ではありますが何とか完結目指して頑張りますので暇つぶし程度に読んでいって下さいませ(´▽`) (2019年1月23日 19時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年8月14日 14時