異常事態 ページ47
背後から聞こえてきた呻き声。
その正体を確認するよう無意識に顔を向けつつ、一成は同時に誰によるものなのかを考える。
幸と椋は部屋の左側のベッドで寝ている為、正面にいる一成の背からは聞こえる訳が無いだろう。
となると答えは一つで。
(もしかしてーーー)
そう思った瞬間、まるで答え合わせをするかのように呻き声は大きさを増した。
「ぐぅ....っ！はっ......ぅ、」
「......！？ はやみんっ！」
「Aっ！」
普通とはかけ離れた様子の速水に、一成と三角は慌てて彼の眠るベッドへと駆け寄る。
どたばたとそれなりの音が出たが、とても構っていられる状況ではなかった。
「はやみん、はやみん！」
「A！」
すぐ様駆けつけて速水の表情を伺うも、額を流れる汗と中心に寄りきった眉はいかにも深刻そうで。
とにかく目を覚まして貰おうと、二人は名前を呼びながら身体を揺する。
幸と椋が熟睡さえしていなければ、確実に起こしていただろう。
それ程の声量だと言うのに、固く閉じられた瞼は開く様子がまるで無く。
「う......ぐ......っ！」
いかにも苦しそうな、掠れた声と荒い呼吸が繰り返される。
(どうすれば......！)
最善策が見当たらず、不安と苛立ちを募らせる一成。
実際の所、ここまで酷く魘される人間を見るのは今回が初めてだった。
ただ悪い夢を見ているだけなのかもしれないし、それこそ放っておけば勝手に目を覚ます可能だってある。
所詮は夢なのだから、不安がる必要など無い筈だ。
そう分かってはいるのに、内心不安で仕方ないのは何故なのか。
考えても答えは出ない。
(とりあえず監督ちゃんにーーー)
そう考えて立ち上がろうとした時、寝室の入口から、ドサリと何かが落ちる音がした。
驚いて振り返ると、そこには風呂から戻ってきたらしい天馬が目を見開いて立っていて。
顔面蒼白の一成に何かを察したらしい。
「おい、何があった！」
名前を呼ばれるより早くこちらに駆け寄ると、速水の様子に驚愕する天馬。
「おいA！」
勢いそのままに声をかけ揺するも、速水は一向に起きる気配を見せず。
それ所か、時間が経つに連れて苦しさが増しているようだった。
(これ、本気でまずいんじゃ......)
心臓がバクバクと騒ぎ、一成さえも呼吸が乱れ始める。今ではもう策を考える余裕すら無い。
あの速水がここまで弱るなんて。
「俺、監督ちゃんにーーー」
「待って、かず」
そんな中、待ったをかけたのは意外にも三角だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1752人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノルン(プロフ) - 更新お疲れ様です！待ってました！！今回も物凄く面白いです！（語彙力）三角の行動に心臓がキュッて締め付けられました 次の更新も楽しみにしてます！ (2019年1月26日 17時) (
レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 杏仁豆腐さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。不在中に二度も待機コメントして下さって感謝以外の言葉も出ません・ﾟ・(つД｀)・ﾟ 本当にありがとうございます！！ (2019年1月25日 20時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - うわぁぁぁ！！続きがメッチャクチャ気になりますぅぅぅ！！ 次の更新待ってます！！ (2019年1月25日 11時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - ラッキーさん» 今更ながらですみません。コメントありがとうございます！たまに自分の稚拙な文章力に落ち込んでたりするので、そう言って頂けるのはすごく嬉しくてやる気になります.....！また再開して行くつもりですので、今後もよろしくお願いします(´▽`) (2019年1月24日 16時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 支杞さん» コメントありがとうございます！大っっ変長らくお待たせしておりました。今更ではありますが何とか完結目指して頑張りますので暇つぶし程度に読んでいって下さいませ(´▽`) (2019年1月23日 19時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：祐 | 作成日時：2018年8月14日 14時
