理由が無くても(いづみ) ページ13
咲也side
天馬くんの言う事一つ一つが正論すぎて、俺は気づけば下を向き、ただ黙り込んでいた。
(分かってる……)
言い返せない事が悔しくて、テーブルの下で静かに拳を握り締める。
根拠の無い言葉がどれだけ相手を苦しめるのかなんて、そんなの俺だって分かってるよ。
俺だって、過去に沢山言われて来たんだから。
大丈夫だって。これからは一緒だって。きっと力になれるって。
この言葉達に沢山傷ついてきた。
ーーーそしてそれは多分、目の前にいる天馬くんも同じで。
「……」
俯いたまま、俺はさっき言われた事を思い出す。
あの言葉には、計り知れない程の重みを感じた。
天馬くんも、俺みたいに似たような事を沢山言われて来たんだろう。
(……もしそうなら)
もし、天馬くんが同じ気持ちの上で俺にやめるよう言ったのなら。
もっとちゃんと、伝えなくちゃ。
散々根拠の無い言葉に傷ついてきた俺が、それでも、さっきの言葉を選んだ訳を話さないと。
(……)
悔しさを抑え、握り締めていた手も緩める。
顔を上げて深呼吸をすれば、少しだけ頭がクリアになった。
そのまま、目の前の彼に話しかける。
「春組公演でさ、俺と真澄くん殺陣やったでしょ?」
「?ああ……」
話が変わった事に目を丸くしながら、こくりと頷いた天馬くん。
「あの殺陣、一度は無くなりかけたんだ」
「は?」
眉を寄せた天馬くんに、俺はあの時の事を思い浮かべながら話していく。
「俺がなかなか上手くならなくて、これ以上は限界だって監督さんが。その後ロミオ役自体交代だって話まで出て」
あの時は本当に焦ったな。
必死すぎて、周りも考えないで「ロミオ役は俺の役だ」って叫んだっけ。
「それでどうしたんだ?」
いつの間にか興味を持ってくれたらしい天馬くんに、俺は懐かしがりながらも続けていく。
「そうしたら、Aさんが一度皆から俺を遠ざけたんだ。その頃練習であまり寝れてなかったから、気遣ってくれたんだと思う」
「あいつが……」
「うん……それで言ってくれたんだ。咲也なら大丈夫、きっと出来るって」
それこそ根拠の無い言葉だけど、それがどれだけ嬉しかったか。
どれだけ助けられたか。
「なんでかな……同じ言葉なのに、分かってくれてるのが凄く伝わってきた」
その期待に応えたいと思って、皆の支えがあって、こうして今の俺がある。
例え根拠なんてなくてもその言葉だけで。
相手の苦しみを、少しだけでも共有してあげられるんだって気づけた俺に。
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ノルン(プロフ) - 更新お疲れ様です!待ってました!!今回も物凄く面白いです!(語彙力)三角の行動に心臓がキュッて締め付けられました 次の更新も楽しみにしてます! (2019年1月26日 17時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 杏仁豆腐さん» コメントありがとうございます。お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。不在中に二度も待機コメントして下さって感謝以外の言葉も出ません・゚・(つД`)・゚ 本当にありがとうございます!! (2019年1月25日 20時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - うわぁぁぁ!!続きがメッチャクチャ気になりますぅぅぅ!! 次の更新待ってます!! (2019年1月25日 11時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - ラッキーさん» 今更ながらですみません。コメントありがとうございます!たまに自分の稚拙な文章力に落ち込んでたりするので、そう言って頂けるのはすごく嬉しくてやる気になります.....!また再開して行くつもりですので、今後もよろしくお願いします(´▽`) (2019年1月24日 16時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
祐(プロフ) - 支杞さん» コメントありがとうございます!大っっ変長らくお待たせしておりました。今更ではありますが何とか完結目指して頑張りますので暇つぶし程度に読んでいって下さいませ(´▽`) (2019年1月23日 19時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:祐 | 作成日時:2018年8月14日 14時