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結婚生活は順調だった。お互い似たもの同士なのか、1番ではないからこそ多くの部分を妥協しているのか、理由は分からないが想像以上に問題も少なく、それなりに楽しく生活出来ていた。
それは数年経っても変わることがなくて。心地の良さすらも感じていて。ただ、私たちの関係が歪なことだけが少し足枷になっていたようにも思う。
私たちのこれは、決して愛ではなかった。お互いに対する感情は愛とはかけ離れているような気さえしていた。
「Aんところはまだ子どもとか考えないん?」
『え?』
カフェでのんびりとお茶をしていた日差しが心地よい日。唐突の話題にぴたりと固まってしまう。
「まーしぃもAも子ども大好きやん?もう新婚ってわけでもないしさ。作ろうってなるんかなと思ったんよ」
『あ、あぁ…私と志麻はもう少し2人でいたいかな〜』
「そうなん。まあ2人の問題やしね、俺の突っ込む話じゃないわな」
『そうだよ〜!センラに言われる筋合いないもん。告白まですっっごく奥手だったくせに。手出すのは早いんだ?』
センラが片思いをしていた期間は実に3年を超えていた気がする。一目惚れとか言っていた気さえするが、それも忘れてしまうほどに。
「めちゃくちゃ紳士に順序よくしたわ!」
『それもそれでどうなの』
「それを言うならお前こそどうやねん。まーしぃといい感じとか言いながらずーっと進展なかったくせに」
昔から志麻とはたまに元々恋バナをする程度の仲だった。恋バナも相手のことまでは知らなかった。でも、志麻と同類だと気づいてからは、気持ちを押し殺すために互いを利用した。やることはやっていても、たったそれだけの関係だ。心は別にあるのに、進展なんてものあるわけがない。
『私と志麻は両片想い楽しんでたんです〜。どっかの遠目で見てる片思いさんとは違って!』
「別にいいやろ」
『いいけど。一途のあまり数年こじらせてた奴に言われてもね。ちょっと説得力足りないかも』
「あぁもうはいはい。俺はこじらせてましたよ」
『開き直んないでよ〜』
「…まあ何はともあれさ。好きな人との子どもってめっちゃいいもんやで?考えるだけでもありやと思わん?」
幸せそうに微笑むセンラを見て、ぎゅうと胸が痛んだ。
『俺の口挟むんかい』
「ちゃうって〜!俺はお前にもその幸せを知って欲しいだけやって。まあ、幸せの形なんて人それぞれやし、お前らが幸せならそれでいいんやけど」
『センラお得意のお節介ね。また志麻と話してみるよ』
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