初めまして、命の恩人です。2【東卍】

79. ページ29

『まあ、せっかく連れて来てくれたわけだし、今日はイザナの我儘に付き合ってあげる』

「…言ったな？」

すると腕を強く引かれ、唇に柔らかい感触が。


『………』

「……」

『………？』

「なんだよ」

『いや、レモンの味しないなって思って…』

以前千冬くんが貸してくれた漫画に、"ファーストキスはレモンの味がする"って書いてあった。


『…はっ、さてはイザナ初めてじゃないな？』

「……」

『え、なに』

無言でイザナに抱きしめられる。

「…お前の純情は俺が守る」

『どうしたよ急に』

今日のイザナはなんか変だ。



『…で？本当は話したいことがあるんでしょ』

「！…やっぱお前にはバレてたか」

イザナの視線が海へと向かう。

「マイキーのこと。アイツさ、血の繋がってない俺のこと"兄貴"って呼んでくれたんだ。

…弟が間違った道進もうとしてんなら、それを止めるのが兄貴だろ？」


『…うん、そうだね』

「でも、アイツが何考えてんのか全然わかんなくてさ。

……シンイチローなら、どうすんのかな」

イザナの瞳が不安げに揺れる。

そんな彼の手をぎゅっと握り、向かい合う。


『シンイチローならじゃない。イザナならどうするの』

「…ッ」

『私も協力する。一緒にどうするか考えよう？』

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