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、、 ページ25

「あとね、こっそり鯛を焼いてみようと思っているの」


真衣も声を潜めて返す。


「贅沢ですね」

「塩をしてホイル焼きにしようと思うの。
真衣ちゃんもぜひ食べに来てね」

「女性2人で秘密のお話ですか?
何の企み?」


玄師がお重を抱えて厨房から出てきた。

真衣と弥恵は顔を見合わせ、クスクス笑う。

 
「秘密のお話なのですから、言えませんわ。
あら、それは私の花びら餅かしら?」

「はい。
20個出来上がっております」


玄師がお重の蓋を開けてみせると、弥恵は覗き込んで目をキラキラ輝かせた。


「綺麗、それに美味しそう。
親戚が集まるの。
きっと皆んな喜ぶわ」


玄師は嬉しそうに頭を下げる。


「そうだわ。
お土産用のお菓子も頂こうかしら」


弥恵は焼き菓子の詰め合わせを大箱で4つも買い、持ちきれない荷物を玄師が届けに行くことになった。

店の配達用のバンに荷物を乗せ、安全運転で走って行く。

店の前で見送った真衣が店内に戻ると、斑尾がカウンターの中に入っていた。


「いらっしゃいませー」


裏声で出迎えた斑尾を、真衣は半目でジロリと睨む。

そのまま無表情でイートインスペースの椅子に座りふんぞり返った。


「お茶」

「はーい」


わざと偉そうに顎を上げて言ったが、斑尾はノリノリでサービスの煎茶を2つ淹れて持ってきた。


「どうぞ召し上がれー」


真衣の前と自分の座る席に茶碗を置き、ニコニコと笑う。

真衣はお茶を啜り深い溜息を吐いた。

お茶が美味しい。

しかし、なんだか負けた気分だ。

真衣はその苛立ちを視線に込めて斑尾にぶつけた。


「斑尾さん。
ウエイトレス希望なら、商店街の喫茶店で求人を募集してましたよ」

「真衣ちゃん、俺はキミだけにサービスしたいんだよ」

「はいはい。
それで、今日は何しに来たんですか?」

「今日で仕事納めだろ?
残り物の生菓子を食べて差し上げようと思ってな」


真衣は呆れて口を大きく開けたが、思い直して壁の時計を見上げた。

閉店まであと15分。

ショーケースの中には、まだポツポツと菓子が残っている。


「しょうがないですね。
お店閉めたら食べちゃって下さい」

「やった!
お、アムリタがあるじゃないか。
美味いよな。
玄師の最高傑作だな」


真衣は身を乗り出し、目を輝かせる。

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作者名:井原 x他1人 | 作成日時:2020年6月14日 11時

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