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「3日だね。
本当は出来立てをその日に食べてもらいたいんだけど、うちは31日で店を閉めて、正月休みに入るから。
真衣さんはお休みの間、何か予定があるんですか?」

「何も」


真衣はくるりと回って両手を大きく広げる。


「俺と太宰府へ初詣に行く予定を忘れてないか?」


後ろから掛けられた声に振り向くと、厨房の裏口から斑尾が入ってきたところだった。


「初詣は1人で、近所の神社に行く予定です。
それと斑尾さん、表から来て下さい」

「なんか美味そうな匂いがしたから引き寄せられたんだよ。
何作ってんだ?」

「花びら餅だよ。
匂ってたのは味噌餡かな」


斑尾は日に焼けた腕を組み、大きな冷蔵庫にもたれ掛かって玄師に聞く。


「ほーん。
誰か京都出身の御仁が居るんか」


真衣は首をひねりながら玄師に聞く。


「花びら餅と京都って、何か関係があるんですか?」


斑尾は口を尖らせて真衣に不服を表明する。


「真衣ちゃん、なんで俺に聞かないわけ?」

「だって斑尾さん、いっつも適当なこと言うから」

「俺は食い物に関して適当は言わんぜ」

「何でですか?」

「俺の仕事はフードライターだぜ?
仕事で適当なことを言う男はいないさ」


真衣は心底驚いたと言った風に、口をポカンと開けた。


「斑尾さんがまともなこと言った・・・!」

「真衣ちゃんは、俺を何だと思ってるのかな?」


2人がじゃれていると、店のドアがカランカランと音を立てた。

真衣が急いで厨房から飛び出して行く。


「いらっしゃいませー」


城内弥恵が餅花の枝を何本も抱いて、にこやかに立っていた。


「あ、餅花!
お買い上げになったんですね」

「ええ。
今年町内会でどんど焼きをするという話を聞いたから、その時に子供たちにあげようと思って」


どんど焼きは近所の神社で行われる。

正月の書き初めや締め縄を持ち寄り、焚き火を焚くのだ。

町内会の老人クラブが主催していて、毎年その縁起の良い火でサツマイモや里芋を焼いたりしている。


「餅花も焼いて食べるんですね、楽しそう!」


弥恵は声を潜めて真衣の耳に口を近づける。


「あとね、こっそり鯛を焼いてみようと思っているの」


真衣も声を潜めて返す。


「贅沢ですね」

「塩をしてホイル焼きにしようと思うの。
真衣ちゃんもぜひ食べに来てね」

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作者名:井原 x他1人 | 作成日時:2020年6月14日 11時

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