なんでも承りますよ～3～ (ページ16)

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年の瀬も迫った12月の下旬。

玄師の新しいお菓子作りは暗礁に乗り上げていたーーというよりもはや、転覆の危機に直面していた。

干し柿が丸ごと入った食べにくいゼリーや、カレー味の大福などを作り上げ、真衣はそれらを身震いしながら試食した。

けれど決して、ひと口も残しはしなかった。

いつも試食する時は満面の笑みを浮かべる真衣が、必死な顔でお菓子を頬張る。

真衣は喜んで食べられないことが申し訳なくて、身を縮めた。

それでも玄師は、取り憑かれたようにお菓子を作り続けた。

自分の持っている知識を総動員して、そこにないものを求めて。

目を瞑って歩くように、幻を掴もうとするかのように。

焦っていた。

焦りは玄師の手を、舌を縛った。

今日も真衣が堅すぎる煎餅に顔を歪めながら歯軋りするように噛んでいると、玄師がそっと口を開いた。

「ごめんなさい真衣さん。
やっぱり俺には、新しいお菓子なんて作れそうもない」

真衣はガリガリと煎餅を噛み砕き飲み下してから、玄師の背中を叩いた。

「お煎餅、美味しかったです！
ちょっと固かったけど、こういうの好きな人って結構いると思いますよ」

「・・・真衣さん」

玄師の眼差しはどこか遠いところを見つめているようで、真衣は幻から玄師を引きずり出すかのように満面の笑みを浮かべた。

「玄師さん。
気晴らしをしましょう。
ここのところずっと、厨房に篭りきりですもん」

「・・・そうかもしれない」

「今日、お店閉めたら出かけましょう！」

「出かけるって、どこに？」

「秘密です！」

真衣はにっこりと笑った。

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玄師が真衣に連れられてきたのは駅前広場。

新幹線が止まる基幹駅は人でごった返していた。

その人たちが皆、足を止め空を振り仰ぐ。

駅舎がライトアップされて、キラキラと光が落ちてくるのだ。

広場には光のオブジェが立ち並び、星空が舞い降りてきたかのようだった。

玄師は首を伸ばして駅舎を見つめる。

駅舎に掲げられた大きな時計の文字盤が宝石のように輝いていた。

2人は肩を並べて、光の中をゆっくり歩く。