なんでも承りますよ～3～ (ページ17)

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「はい」

「真衣さん、ありがとう」

玄師が微笑むと、真衣も微笑み返す。

「私、玄師さんの作るお菓子が好きです。
美味しいものを食べた時、私1番幸せです。
楽しみにしてます、玄師さんのお菓子。
世界中の誰よりも」

玄師は深く頷いて答えた。

「美味しいって・・・ただ、美味しいって言ってもらえるお菓子を、作るよ」

玄師はそっと目を瞑り、キラキラと輝く夜景を、キラキラと輝く真衣の瞳を、目に焼き付けた。

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お爺さんはお菓子と語り合うように、いつも微笑みを浮かべ調理台に立っていた。

幼い真衣は母に手を引かれ菓子店を訪れる度に厨房を覗き、お爺さんがニッコリと笑ってくれることが、楽しくて仕方なかった。

ある日、お爺さんの面影がある若い青年がショーケースの向こうに立つようになった。

もう母に手を引かれるほど幼くなかった真衣は、1人でお菓子を買い、青年の微笑みに送られて店を出た。

それ以来、真衣は小遣いを貰うと菓子店に駆けて行った。

真衣は財布と相談して、2つか3つのケーキを買った。

それが月に1度の贅沢で、喜びだった。
　
真衣が高校生になるころ、お店のお爺さんが亡くなったと耳にした。

店が無くなってしまうのではないかと心配したが、変わらずそこにあった。

青年も変わらずそこにいて、ショーケースにはお菓子が並び続けた。

けれど真衣が覗くと、店内は無人なことが多かった。

彼は厨房にいることが多かったのだろう。

真衣が高校を卒業してから暫くして、店の前に貼り紙があることに気付いた。

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真衣は考える間もなく、店のドアを開いたーー。

「・・・真衣さん」

遠くから呼ぶ声がする。

あの声はショーケースの向こうから、厨房の奥から、いつも真衣を呼ぶ声だ。

いつもの・・・でも、懐かしい声だ。

「真衣さん」

うっすら目を開けると、肩にかけられたジャケットが見えた。

玄師が真衣の肩に手をかけていた。

真衣は店舗のテーブルに突っ伏して寝ていたようだ。

「試食してもらえる？」

玄師に手を引かれ立ち上がる。

今日だけで、何度目の試食になるだろう。

もう真衣の味覚は麻痺しかけていた。