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63話 ページ27

・赤井視点

降谷くんと爆処理班の後にAは講習をしており、現在前に立って講義の最中だ。
それを見学し、昔は何も出来そうになかったあの子供がこうも立派になるとは、何だか子でも持った親の気持ちのようになる。

………まさに人の上に立つ人間、といった風格が、今のAにはある。昔からは、本当に考えられないほどに。

俺の教育の賜物か、それとも警察学校でか、あるいは、公安で絞られたせいかーーーー
女なのに女ではないと言われるほどになるまでに、あいつは強さというものを求めた。
涙さえ流せなかった。自分自身が泣くことさえ、きっと許さなかったのだろうから。
けれど漸く泣いたのだと、あの日降谷くんが言った時、俺は本当に心底安堵したのだ。


……同時に、少しばかり嫉妬もしたが。

「赤井くん」

隣にいつの間にか来ていたらしい斎藤先生は、腕を組みながら俺を小声で呼んだ。

「…どうかしましたか?」

「いや、遠山と付き合い長いんだろ?あいつの師匠なんだってな。……昔から多分、遠山は少し難しい奴だったんだろうし。あんなに遠山が強いのも納得した。君が鍛えてたからなんだな」

「…いえ、そんな大したことでは」

「ただの師匠、って間柄じゃなさそうだな。着痩せしてるように見えて付いている筋肉は、相当鍛えてるものだ。加えてその指のタコ。つき方からして恐らく銃…それもライフルを握ってるよな。
……赤井くんも、俺たちと同業者だと思ってるけど、どうだ?」

………まさかそこまで見られていたとは、感服した。
素直に認め、「FBIです」と言えば感嘆したように斎藤先生は声を漏らす。

「そりゃ強い訳だ。成る程な、そりゃあ日本警察の教育より遠山は逸脱してる訳だよ」

「いいえ、俺はただ少し教えた程度ですよ。」

「……なんにせよ、ありがとう。遠山のこと、随分と可愛がってるように見えたから。」

……この人は、随分と人を見ていると思った。
同時に、Aのことをずっと心配していたのだということも。

「…可愛い妹分ですから。今も、昔も、ずっと可愛いままですよ」

親心というものがある同士、何か通じるものを感じた。

講義をし続けるAに、羨望の眼差しを送る生徒達の姿に、昔のAが俺に向けていた視線を垣間見る。
昔は、あんな風にお前も、俺に憧れていたというのに、今じゃ、どんどん強くなるばかりだな。

「………子離れというものは、なかなかキツいな」

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ちゅん(プロフ) - 番外編みたいです(;_;)パスワード知りたいです( ; ; ) (2021年3月7日 14時) (レス) id: 1fdd2ab3eb (このIDを非表示/違反報告)
闇月 - イラストが最高で思わず保存したいと思ってしまいました! (2019年9月25日 19時) (レス) id: ceaacc411b (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - なんかもう理想すぎるストーリーが見つかってまだまだこれから頑張れる。ありがとうございます。これからも頑張ってください。 (2018年4月28日 12時) (レス) id: 6434e4011a (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 蒼衣さん» こんにちは!いきなりごめんなさい…。用件は下の私のコメントと同じです。よかったら見てみてください! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)
まさき(プロフ) - 湊叶さん» こんにちは。突然すみません!パスワードなんですが、作者さんの作品一覧のページのコメントを見ると書いてありますよ!脇から失礼しました! (2018年4月22日 22時) (レス) id: 8f71bf94c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年10月23日 18時

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