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「如何して此処に…」
呆然とするAに、太宰は一瞬Aの手首に付けられている手錠に目を向ける。
罪人の様な姿になっている友人の姿を見て、太宰自身は正直余り良い気分ではない。手錠を付けた張本人であろうドストエフスキーをジトリと太宰は睨め付けるが、彼は楽しそうに嗤うだけだった。
「……何も話してないのかい?」
「道中で話して、分離体に襲われるのも面倒でしたので。此処で話した方が早いでしょう?」
「…まあそうだね。取り敢えず此処まで無事で善かったよ、A」
「……お前、此処に居るという事は、真逆首謀者側なのか」
「まあそうだね。その通りだよ。」
嘘だろう、と分かりやすく動揺したAに、少し眉を下げて困った様に太宰は笑う。
「私達は君を殺す気は毛頭無い。其れだけは信じて欲しい。寧ろ、今のこの横浜で骸砦以外に安全な場所は無いからね。
外には分離した異能達が跋扈していてる。今のこの横浜は、文字通り無法地帯だからだ」
太宰は今現在のこの横浜の状況を話し出した。
今現在、この横浜は横浜中に溢れた霧の影響によって、異能力者から異能が分離して居る。
そして、その分離した異能は、異能の主人を殺そうとしている。
だが、主人のみならず、異能達が目にした人間は全て殺しに掛かってくる。だから自分達は、Aを此処に招き入れたと。
「実際は、保護という名目での監視でね。……矢張り未だ分離してはいないのだね」
「体調不良なのもその影響でしょうね。実際は分離していなければならない物を、押さえ付けているのか…或いは、中のものが出てこない様に抗ってるかは、定かではありませんが」
「……?」
情報過多にAの脳は付いていけない。
異能とか、そういうものに俺に何の関係が。回らない頭で、不調気味の身体で必死に何かを考えようとしても、頭を殴られている様な感覚は響いている。
ずっと目眩が続いている様な感覚が、Aにはあった。否、実際そうなのかもしれない。
初めての感覚にAは訳が分からなくなっている。熱でも何でもない。内側からこじ開けられる感覚が、酷く気持ちが悪い、と肺から息を漏らしながら。
「今のこの横浜は、異能力者しか存在する事が出来ない空間になっている」
君が此処に居る事がその証明になっている。
言葉を続けた太宰に、Aは目を見開く。
「つまりは君は、異能力者という事だよ。……A」
『斜陽の罪人』
「たった一つくらい、ハッピーエンドがあっても構わないだろう?」
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あんこ入りのよもぎもち。(プロフ) - 好きです。面白いと言うか、綺麗なお話だと思いました。途中で泣いちゃいました。何と言うか言葉に出来ません。神作ってこう言う物を言うんだと思いました。 (2021年8月11日 4時) (レス) id: 002ae44b05 (このIDを非表示/違反報告)
佐 - めっちゃよかった……もっと絡みが見たい (2021年3月20日 20時) (レス) id: 7f95d97ba7 (このIDを非表示/違反報告)
6代 - 1日読み尽くして感情移入してしまいました、素敵な作品に出会えて良かったです。 (2020年11月10日 0時) (レス) id: 13ac01a0ba (このIDを非表示/違反報告)
織架 - すげぇ、好きっす。 (2020年10月7日 18時) (レス) id: 379e4fa26b (このIDを非表示/違反報告)
銀(プロフ) - あっ…好きです。 (2020年10月3日 23時) (レス) id: 3d47931e7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2019年10月14日 0時