検索窓
今日:1 hit、昨日:18 hit、合計:135,028 hit

197 ページ9

「如何して此処に…」


呆然とするAに、太宰は一瞬Aの手首に付けられている手錠に目を向ける。
罪人の様な姿になっている友人の姿を見て、太宰自身は正直余り良い気分ではない。手錠を付けた張本人であろうドストエフスキーをジトリと太宰は睨め付けるが、彼は楽しそうに嗤うだけだった。


「……何も話してないのかい?」

「道中で話して、分離体に襲われるのも面倒でしたので。此処で話した方が早いでしょう?」

「…まあそうだね。取り敢えず此処まで無事で善かったよ、A」

「……お前、此処に居るという事は、真逆首謀者側なのか」

「まあそうだね。その通りだよ。」


嘘だろう、と分かりやすく動揺したAに、少し眉を下げて困った様に太宰は笑う。


「私達は君を殺す気は毛頭無い。其れだけは信じて欲しい。寧ろ、今のこの横浜で骸砦以外に安全な場所は無いからね。
外には分離した異能達が跋扈していてる。今のこの横浜は、文字通り無法地帯だからだ」


太宰は今現在のこの横浜の状況を話し出した。
今現在、この横浜は横浜中に溢れた霧の影響によって、異能力者から異能が分離して居る。
そして、その分離した異能は、異能の主人を殺そうとしている。
だが、主人のみならず、異能達が目にした人間は全て殺しに掛かってくる。だから自分達は、Aを此処に招き入れたと。


「実際は、保護という名目での監視でね。……矢張り未だ分離してはいないのだね」

「体調不良なのもその影響でしょうね。実際は分離していなければならない物を、押さえ付けているのか…或いは、中のものが出てこない様に抗ってるかは、定かではありませんが」

「……?」


情報過多にAの脳は付いていけない。
異能とか、そういうものに俺に何の関係が。回らない頭で、不調気味の身体で必死に何かを考えようとしても、頭を殴られている様な感覚は響いている。
ずっと目眩が続いている様な感覚が、Aにはあった。否、実際そうなのかもしれない。

初めての感覚にAは訳が分からなくなっている。熱でも何でもない。内側からこじ開けられる感覚が、酷く気持ちが悪い、と肺から息を漏らしながら。


「今のこの横浜は、異能力者しか存在する事が出来ない空間になっている」


君が此処に居る事がその証明になっている。
言葉を続けた太宰に、Aは目を見開く。






「つまりは君は、異能力者という事だよ。……A」

198→←196


『斜陽の罪人』

「たった一つくらい、ハッピーエンドがあっても構わないだろう?」


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (334 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
505人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あんこ入りのよもぎもち。(プロフ) - 好きです。面白いと言うか、綺麗なお話だと思いました。途中で泣いちゃいました。何と言うか言葉に出来ません。神作ってこう言う物を言うんだと思いました。 (2021年8月11日 4時) (レス) id: 002ae44b05 (このIDを非表示/違反報告)
- めっちゃよかった……もっと絡みが見たい (2021年3月20日 20時) (レス) id: 7f95d97ba7 (このIDを非表示/違反報告)
6代 - 1日読み尽くして感情移入してしまいました、素敵な作品に出会えて良かったです。 (2020年11月10日 0時) (レス) id: 13ac01a0ba (このIDを非表示/違反報告)
織架 - すげぇ、好きっす。 (2020年10月7日 18時) (レス) id: 379e4fa26b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あっ…好きです。 (2020年10月3日 23時) (レス) id: 3d47931e7d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年10月14日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。