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・太宰視点
「お久しぶりですね太宰君。随分と人数を引き連れて何処へ?」
「君に話す筋合いは無いよ。此方は君に用なんか無いから、もう行っても構わないかな?」
「おや、其れはつれないですね。此方には用がありますよ。あの小さな子供、見覚えがある顔なのですが。何処の稚児です?」
チラリと樹君に抱きかかえられているAに視線を寄越すドストエフスキーにびくりと反応するA。
しおしおと萎縮して視線を落とす姿に、何らかの含みを持たせた様な笑みを魔人を浮かべた。
「……大凡察しはつきますが、また厄介事に巻き込まれたんです?書類で見た事のあるAの幼少期そのものだ。
後の二人もAの弟御と妹御ですね?随分と成長したものですね。兄と良く似ている」
「………」
「ええ、……本当に、良く似ている。」
Aから視線は樹君に移って、目を細めた魔人に、樹君は訝しげに睨み付ける。
希ちゃんの方は中也が後ろに隠している様だが、…あーあ、最悪。寄りにも寄ってこの男に出逢って仕舞うとは。
私の横を通り過ぎて、魔人は樹君とAの処へと近寄る。樹君の事は目もくれず、少し屈んで、Aと視線を合わせる魔人の顔は、私からは見えない。
ただ、Aの顔は見える。怯えと、目の前の知らない人間に対して「誰?」といった様な年相応の子供の様な反応。
「随分小さくなりましたね。否、戻った、というのが正しいんですかね。
少し目を離すと直ぐ此れだ。この姿であれば、簡単に持ち帰れそうですけれど」
聞き捨てならない言葉が聞こえて、「……君、」と声をかければ、中也の方も構えを取っていた。
冗談なのか本気なのかは読めないが、似た者同士だからこそ分かる。強ち嘘でも無いことは。
樹君も警戒している様で、「アンタ、何」とAを強く抱き締めながら、魔人から少し距離を取った。
一触即発の雰囲気。
「ぼくはこの子の友達ですよ。」とAに手を伸ばした魔人の手は、バチン、と弾く音と共に弾き落とされた。
「触らないで」
何時の間にか中也の後ろから出て来ていたらしい希ちゃんは、魔人の手を叩き落としたのだ。
予想外の事に、私や魔人も、中也も目を丸くしている。
そして樹君やAもだった。初対面時、朗らかで明るい子だった希ちゃんが、こんなにも敵意を剥き出しにしていて、呆気にとられた。
……魔人の手を叩き落とすって、矢ッ張りこの兄妹相当肝が座っていると思う。本当に。
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遥@携帯の調子悪くて返信遅れます(プロフ) - コメント一括にて失礼します。最近携帯の調子悪いので…皆様お待たせしました。次の話でとりあえずは彼の話は一旦終わりとなります。最後まで書き切りますので、それまで見てくださると嬉しいです。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
至恩(プロフ) - お久しぶりです!わーい更新だー!って通知見て思いました! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 77907255a2 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の死神(プロフ) - わわ…!更新待ってました!これからも頑張って下さい! (2019年10月13日 1時) (レス) id: eb1a5cc196 (このIDを非表示/違反報告)
或 - どストライクで大好きな作品です!応援してます!! (2019年9月27日 13時) (レス) id: 62feb543dd (このIDを非表示/違反報告)
フェルト - すごく大好きです!頑張ってください! (2019年9月26日 18時) (レス) id: 00cb91440a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2019年2月15日 19時