検索窓
今日:20 hit、昨日:11 hit、合計:321,770 hit

173 ページ32

・太宰視点

「お久しぶりですね太宰君。随分と人数を引き連れて何処へ?」

「君に話す筋合いは無いよ。此方は君に用なんか無いから、もう行っても構わないかな?」

「おや、其れはつれないですね。此方には用がありますよ。あの小さな子供、見覚えがある顔なのですが。何処の稚児です?」

チラリと樹君に抱きかかえられているAに視線を寄越すドストエフスキーにびくりと反応するA。
しおしおと萎縮して視線を落とす姿に、何らかの含みを持たせた様な笑みを魔人を浮かべた。

「……大凡察しはつきますが、また厄介事に巻き込まれたんです?書類で見た事のあるAの幼少期そのものだ。
後の二人もAの弟御と妹御ですね?随分と成長したものですね。兄と良く似ている」

「………」

「ええ、……本当に、良く似ている。」

Aから視線は樹君に移って、目を細めた魔人に、樹君は訝しげに睨み付ける。
希ちゃんの方は中也が後ろに隠している様だが、…あーあ、最悪。寄りにも寄ってこの男に出逢って仕舞うとは。
私の横を通り過ぎて、魔人は樹君とAの処へと近寄る。樹君の事は目もくれず、少し屈んで、Aと視線を合わせる魔人の顔は、私からは見えない。
ただ、Aの顔は見える。怯えと、目の前の知らない人間に対して「誰?」といった様な年相応の子供の様な反応。

「随分小さくなりましたね。否、戻った、というのが正しいんですかね。
少し目を離すと直ぐ此れだ。この姿であれば、簡単に持ち帰れそうですけれど」

聞き捨てならない言葉が聞こえて、「……君、」と声をかければ、中也の方も構えを取っていた。
冗談なのか本気なのかは読めないが、似た者同士だからこそ分かる。強ち嘘でも無いことは。
樹君も警戒している様で、「アンタ、何」とAを強く抱き締めながら、魔人から少し距離を取った。

一触即発の雰囲気。
「ぼくはこの子の友達ですよ。」とAに手を伸ばした魔人の手は、バチン、と弾く音と共に弾き落とされた。

「触らないで」

何時の間にか中也の後ろから出て来ていたらしい希ちゃんは、魔人の手を叩き落としたのだ。
予想外の事に、私や魔人も、中也も目を丸くしている。
そして樹君やAもだった。初対面時、朗らかで明るい子だった希ちゃんが、こんなにも敵意を剥き出しにしていて、呆気にとられた。



……魔人の手を叩き落とすって、矢ッ張りこの兄妹相当肝が座っていると思う。本当に。

174→←172



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (513 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
831人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

遥@携帯の調子悪くて返信遅れます(プロフ) - コメント一括にて失礼します。最近携帯の調子悪いので…皆様お待たせしました。次の話でとりあえずは彼の話は一旦終わりとなります。最後まで書き切りますので、それまで見てくださると嬉しいです。 (2019年10月13日 20時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
至恩(プロフ) - お久しぶりです!わーい更新だー!って通知見て思いました! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 77907255a2 (このIDを非表示/違反報告)
月夜の死神(プロフ) - わわ…!更新待ってました!これからも頑張って下さい! (2019年10月13日 1時) (レス) id: eb1a5cc196 (このIDを非表示/違反報告)
- どストライクで大好きな作品です!応援してます!! (2019年9月27日 13時) (レス) id: 62feb543dd (このIDを非表示/違反報告)
フェルト - すごく大好きです!頑張ってください! (2019年9月26日 18時) (レス) id: 00cb91440a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年2月15日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。