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・太宰視点
『手前、芥川連れて何処行ってんだ。もう夜も更けてンだぞ。早く戻って来い』
「Aにマフィアだってバレた」
中也から電話が掛かってきてあの部屋から退室した後に電話に出れば、不機嫌そうな中也の声を遮る様に単刀直入に告げた。
そう云えば、静止する電話の向こう側。息を飲む様な気配を感じた。
「これは私の失態。真坂バイト帰りかつ割と近くに彼が居たなんて思ってなかった。多分、芋づる式で君の事も分かっただろうしね」
『……手前』
「此れは素直に謝るよ。御免」
『……何れは云うなり何なりしなきゃいけねえ事だったんだ。ンで?渡瀬の反応は?』
「……何も変わらなかったんだよ。其れどころか、あの子、私から命懸けで芥川君の事まで庇ったんだよ」
『手前真坂、折檻していた処を、』
その真坂だよ、と云えば中也は暫く黙ったままだった。
暫くしたら俺だったらドン引くぞと云われたが、其れは至極真っ当だ。と云うか、普通の人間の反応がこれなのだ。
引くどころか家に上げて、私や芥川君に普通にご飯振舞ってる。危機感が無いのか。否、知ってしまったからこそ、彼の性格だと共犯である事をきっと選んだのだ。
「此れは私の何時もの戯言だと思って聞き流してくれて構わないのだけれど」
『………』
「………嫌われなくて、善かった」
電話の向こうの相棒はこの言葉をどう咀嚼して飲み込んでくれたのだろうか。
大嫌いで死んで欲しいとすら思っている男でも、それでも私の唯一無二の相棒なのだ。必要以上に揶揄うのも、煽るのも、時折漏らしたくなる弱音も、この相棒に漏らせる。
『善かったじゃねェか』
たった一言。
この男は、本当に私の一番欲しい答えを何時も云ってくれるのだ。
嗚呼、糞。こんな男なんかに、少なからずとも、その言葉にどれ程安堵したか、なんて死んでいってなんかやらないけど。
『俺も其方行く』
「はあ?今から来るの?」
『バレたんなら俺も俺で云わなきゃいけねェだろ』
云うだけ云って電話を切られた。
彼に云っておかないとな、と思い部屋に戻れば、よしよしと芥川君の頭を撫でているAと、私の言い付けで何も文句も云えない芥川君の何とも面白い事になっていた。
「ねえ私も撫でてよ」
「犬かな?」
「ゴロゴロ」
「猫だった」
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零 - 未だに太宰のSSRが来ない😭(やり始めて1年半です) (3月4日 6時) (レス) @page38 id: 384173ed73 (このIDを非表示/違反報告)
安息香酸 - コメント失礼します。もし良かったら番外編のパスワード教えて頂きたいです! (9月8日 14時) (レス) id: 7f39e79d81 (このIDを非表示/違反報告)
おしとう(プロフ) - ミナさん» コメント失礼致します。もし可能でしたら番外編のパスワード教えていただきたいです!! (2023年3月4日 21時) (レス) id: b3cffe0f1c (このIDを非表示/違反報告)
ミナ - 番外編のパスワードを教えてもらいたいです! (2022年3月12日 18時) (レス) id: edad4e8a78 (このIDを非表示/違反報告)
ama846(プロフ) - コメント失礼します。もしよろしければ番外編のパスワードを教えて頂けませんか? (2021年12月19日 21時) (レス) id: bfb29f0477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遥 | 作成日時:2018年9月28日 16時