【ヒロアカ】瑠璃色の魔女と紅い糸３【轟焦凍】 (ページ19)

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No,104 『忘れてはいけない記憶』ページ19

《Noside》

締め切った喫茶店。
普段は少年少女の秘密の場所なのだが、今日だけは少し違う。

店主はいない。
カーテンをされて見えない店内にいるのは複数の人間。

「おしゃれなお店！Aちゃん、店員さんになって欲しい！」

「はいはい、元気ね？お客様、今日はどうされますか？」

元気溌剌、冷静沈着。
正反対な女子高生2人を眼福とばかりに見つめる2人の男。

「……おい」

「なんだよ」

「俺の姉貴に手出しやがったら潰すぞ」

……否。
1人の女を奪い合う男達。

「ねぇねぇ、あの箱はなに？」

「あの箱……は」

トガヒミコが指差した箱は、棚にある小箱だった。
可愛らしくアンティーク調の装飾を施されたもの。
ただ、この店内には少し浮くような気がする。

天野Aには、あの箱に見覚えがあった。

思い出したくない、凄惨なあの日の記憶として。

「………大切な、もの」

ゆっくりと、手を伸ばす。

……指先が触れる寸前で、その手を引き戻す。

今の自分が触れて良いものではない、と。
汚れた自分が触れては、母に対して悪い……

「……ごめんなさい。ちょっと見せられないの」

少しだけ、遠い目をして微笑む。

そんな少女の機微を見つめる継ぎ接ぎの男。

「……珈琲、煎れられるか？」

「……えぇ、分かったわ」

忘れてはいけないもの。

大切なもの。

それを思い出すまで……

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