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｢ねぇ、どうしたの。何があったの。昨日遅れたのは本当に、本当にごめん。でも、俺別れたくないよ｣
泣きそうな顔をしながら、私の頬の涙跡をなぞる。彼からしたらいきなりこんなことになって意味が分からないだろう。それを理解してる、だから
｢ごめん｣
と必死に捻り出した。その一言を言った途端、目に溜まった涙がぽろぽろと溢れ出す。徹はその涙を指で拭って、私に視線を合わせた。
｢Aちゃん顔赤いよ、……っ、熱あるんじゃ｣
徹はゴツゴツとした、冷たい手で私の額に触れる。ずっとベッドの上で泣いていたから体が重くて頭が痛いのかと思っていたが、どうやら風邪をひいていたらしい。
急に身体の力が抜けて徹のほうへ倒れ込む。それからの記憶はあんまりない。
.
起きたら徹が私のベッドの隣にいて、ずっと私のことを心配そうに見守ってくれていた。
｢……徹？｣
｢！Aちゃん、体の調子はどう？少しはよくなった？……あっ、無理に起き上がらないで｣
徹が優しいのが辛くて、身体が重いのが悔しくて、みっともなくて、涙が溢れる。そんな私の顔をのぞきこんで、｢辛い……？｣って言って徹は手を握ってくれる。絶対今酷い顔をしているのに。
あんなに酷いこと言ったのに。本当は、別れたくない。でも、ダメだ。これ以上彼にすがりつくのはもうやめだ。
酷い顔を見られなくなくて、壁の方を向く。私の手を握ってくれている力が、少し緩まった。
｢徹、｣
｢……うん｣
｢お願い、別れて｣
目は合わせられない。本当はそんなこと思ってないから。静かな空間が続く。
｢……Aちゃんが、そうしたいのなら。俺は止められないよ｣
ずるいよ、こんな時まで。そうやって優しいフリして、私を優先して、自分のことは二の次で。私が眠っている時、彼なりに考えたのだろう。
別れたくないってもっと言ってよ、好きだよって言ってよ。わがままをたくさん言いたかったけど、もうそんなこと言えなかった。
｢でもせめてAのお父さんが帰ってくるまでは、看病させてくれる？気まずいかもしれないけど｣
彼はそう言って少し笑った。どんな表情をしていたのか、背を向けていた私には分からない。
それから熱は随分長引いて、卒業式前にも数日しか行けなかった。クラスの違う私たちはそれから顔を合わせることもほとんどなかった。
そうして卒業して、私は予定より早く東京に引っ越した。
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きゃーぽん(プロフ) - めちゃめちゃキュンキュンするし、すーっごく面白いです！更新頑張ってください！^_^ (2022年6月5日 0時) (
レス) @page50 id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - 佐野さん» わーーんありがとうございます;私の中で傑作になる予定なのでぜひこれからもよろしくお願いします！！！(大嘘) (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
青春の餌(プロフ) - かわあいさん» 気づくの遅くなって大変申し訳ないです；ありがとうございます！ぜひ飽きずにみてほしいです； (2022年5月6日 19時) (レス) id: 08381ab857 (このIDを非表示/違反報告)
佐野(プロフ) - 更新楽しみにしてます〜！ (2022年5月5日 20時) (レス) @page48 id: c029f451b1 (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 更新楽しみにして待ってます！ (2022年4月22日 21時) (レス) @page27 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青春の餌 | 作成日時：2022年4月2日 12時
