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通りかかった局員が声上げてくれたおかげで、
心が少し痛まずに済んだ気がする。
「…このような政治体制になっても尚、男は力に頼る。やはり男に政治を任せる何て出来たもんじゃないわね」
局員は軽蔑するかのように彼を見詰めた。
私はこの局員と同じ時期に中王区に移住することになったため、この局員とはよく昼夜を共にしているし、部屋は隣の部屋同士だ。
彼女は温和で、何もわからない私とは違って物知りで優しかった。知り合いがいない生活の中で、彼女は私の唯一の心の支えだった。
数ヶ月昼夜を共にしても尚、私は彼女のこんな一面を見たことが無かった。
彼女が彼に向ける視線は軽蔑を超えていて、無様すぎて笑えるとまで話す。
「そのような心持では、ラップバトルに参加する権利すら与えられないです」
溜息を吐きながら局長に連絡を入れるつもりなのか携帯を取り出す局員。
「おいこの程度で辞退させんのかよ!」
「口答えする権利はありません」
『ま、待って!!私は大丈夫だから連絡はしないで!!』
容赦のない局員に、思わず私は声を出していた。
「で、でも…!」
『怪我もしてないし!!あの位どうって事ないから!!』
あはは、と笑って見せた。
ようやく納得したのか局員は携帯をしまい、再度忠告だけして仕事に戻っていく。
メンバーの2人は私にお礼を言った。私は会釈だけして彼らから体を背けた。
『…会場、此方です』
彼に背中を向けて歩き出す。
返事は無いもののちゃんと後ろから歩く音が聞こえてくる。
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今この瞬間私は、
彼にどう映っているのだろうか。
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「……何で俺を庇ったんだよ、A」
その声は、誰に届くこともなく薄れて消えていった。
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千秋(プロフ) - はなさん» ありがとうございます!!!冷酷だけど格好良い中王区大好きです!!更新がんばっていくのでよろしくお願い致します! (2021年2月22日 19時) (レス) id: bd08af8d27 (このIDを非表示/違反報告)
はな - めちゃくちゃおもしろかったです!中王区は冷酷ですが格好良いですよね!!更新楽しみにしています! (2021年1月3日 11時) (レス) id: e6cebfae4a (このIDを非表示/違反報告)
千秋(プロフ) - 遊星さん» おまたせして申し訳ありません。楽しみにして頂いてとても嬉しいです。なるべく早いペースで更新するのでこれからも宜しくお願いします! (2021年1月1日 14時) (レス) id: bd08af8d27 (このIDを非表示/違反報告)
遊星(プロフ) - 更新停止になってますが大丈夫ですか?素敵な話なのに更新停止は勿体無いです。早く続き読みたいです。 (2020年12月16日 22時) (レス) id: cc3dcebb37 (このIDを非表示/違反報告)
ねむ - 千秋さん» コメント失礼します!めちゃくちゃ面白いです!更新頑張ってください!! (2020年9月29日 19時) (レス) id: 8b2990a58f (このIDを非表示/違反報告)
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