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それから、私と零はお互いの家を行き来していた。
「A、」
「ん?」
彼の声が柄にもなく震えていたので、私はソファから身を乗り出して振り向いた。
抱きしめられて、私は同時に彼が疲れているのだろうかと考えた。昔からの癖で、私たちは疲れた時に抱きつくというのがあったからだ。
「仕事柄、公には出来ないし他の人がするような壮大な式も挙げられない。いつ狙われるかは俺にも分からない。だけど、Aを守れるくらい強くなった、強くなったから______」
「…零は、私よりずっと強いよ」
「……本当のことを言うと、怖いんだ。もしまた俺のせいで大切な人が死んでしまうのかもしれないと思うと。Aには、ずっと笑っていてほしいし、ずっと側にいてほしい」
「……そんな、私…」
「泣くなよ。…俺だって堪えてるんだから。きっと、バーボンのままでも、安室透だとしても、Aを好きになったと思う。Aが、たまに俺のことを思い出してくれるとそれは嬉しいことだ。____だけど、お前のいる毎日は、どんなに幸せかといつも考え……」
「うるさい、うるさい…零、ずっと一緒にいれるの?私たちは、一緒に、普通の人と同じように、一緒に朝起きて、体温に触れることが出来るの…っ?」
零は、そう言った私をキツく抱きしめた。
私が遠い街に行った時、貴方がたまに私のことを思い出して微笑んでくれていたとしたら、それはどんなに幸せなことだろうか。
だけど、そんな毎日を貴方の隣で過ごすことが出来るのならば、それはこの世で一番幸せなことかもしれない。
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作者名:くさの | 作成日時:2018年6月17日 15時