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「話が、あるんだけど…」

ニュートは結局本も渡せず終いで、彼女に勇気を振り絞って声を掛けたのは夕食の時だった。食事という概念が嫌いな彼女は、クイニーから貰ったピーナッツバターを掬って、甘ったるい香りに包まれたスプーンを口に咥えていた。「はに?」____口に含んだまま喋ろうとするものだから舌足らずの答えが返ってくる。彼には分かっていた。少なからず、Aの機嫌は良いようだ。……好きな味だったのかな?ニュートはすでに底を尽きようとしているピーナッツバターを買い溜めすることを決意した。


「Aにずっと言わなくちゃと思ってて、思ってたんだけど…」
「……」
「その、僕_____Aが、」
「……待ってよ」


「まってよ、」二回も繰り返されたその言葉に、ニュートは思わず口を紡いでしまった。どうしてこういう時ばかり、彼女は目すら合わせてくれないのだろう。スプーンを机に置いて、下唇を噛みしめる。「A……」ニュートが彼女に近付こうとしたのと同時に、Aは勢いよく席を立った。一歩近付けば一歩下がって、立ち止まれば二歩下がる。


「違うんだ」
「何が違うの」
「そうじゃなくって、ただ君に……」
「嫌よ、やめて…」


そう言われてしまうと、ニュートは手も足も出なかった。等々壁に背中がついたAは、どうすることも出来ずに突っ立ったまま、首を横に振り続けていた。何が彼女を脅かしているのか、ニュートは長い付き合いだったが理解に苦しんだ。_____けれどきっと、兄さんのことだ。

頑なにこっちを見ようとしないAに、ニュートは想像以上に心が砕けてしまいそうだった。話が違う!


「……嫌い?」
「こわい、」


睨みつけていた瞳が段々と自信なさげに揺らいで、ついには粒となって溢れ出した。声を押し殺しながら、Aはニュートから目を離さずに泣いたのだった。彼が手のひらで拭おうとすれば、顔をふいと横にして避ける。ニュートはその度泣きそうな気分になったが、それでも諦めようとはしなかった。ほんの一瞬の、気の迷いだったのだ。_____ふと、彼は胸のとんでもない高鳴りに気付いてしまった。最低だとは分かっていた。……けれど、今の彼女がとんでもないくらいに可愛く見えて仕方なかった。泣いている姿を見られるのが癪に触ったのか、Aは強く目元を擦って、赤くなった瞳で彼に対抗していた。ニュートは、一歩前に踏み込んだ。

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くさの(プロフ) - 初音さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けるだけでも嬉しいです。私は上手に恋愛ものが書けないのですごく悩んだんですが安心しました。拙い文章ですがこれからもよろしくお願いします! (2018年12月14日 6時) (レス) id: d0d75d00f1 (このIDを非表示/違反報告)
初音(プロフ) - 申し訳ございません。作者様の作品がいかに素晴らしいかをお伝えしたいのですが語彙力が足りません。在り来りでいいのなら、とても綺麗で切なくて甘い素敵な作品だと思います! (2018年12月14日 0時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くさの | 作成日時:2018年12月9日 15時

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