１１７羽 ページ32
・
・
「いくぜ！」
元気いっぱいに宣言した木兎が赤葦にボールを投げた。その落下地点で構えた赤葦が、走り込んできた木兎へ丁寧にトスをあげる。ネットを挟んだ相手コートでは黒尾がぎらついた瞳でそのボールの軌道を追っていた。
普段黒尾をあしらったりはするけれど、Aはその実力を素直に評価していた。しなやかで安定したレシーブ力は勿論、特に恐れるべきはそのブロック。冷静かつ的確な判断もそうなのだけれど、何より技術が高い。ブロックにおける空中戦が上手いのだ。
Aが期待を込めて見つめる視線の先で、黒尾は見事に木兎のスパイクを叩き落として見せた。
「うぇーい、」と黒尾におちょくられ悔しさを体いっぱいに表す木兎。本当に先ほどの高度なプレーを見せた2人か疑いたくなるところではあるけれど、Aは素直に小さく拍手を送った。
「(うーん……いつみても黒尾さんのブロックには惚れ惚れするね。)」
冷静さ、という観点においては月島も十分。しかしそれでは補いきれないほど、黒尾との実力の差は圧倒的だ。
「やっぱ眼鏡くんさー、読みはいいんだけど……こう……弱弱しいんだな、ブロックが！！腕とかぽっきり折れそうで心配になるっ！ガッ！っと止めないとガッ！と！」
木兎からの指摘に、隣の月島がいら立ったのを何となく肌で感じた。まあ月島にとっては耳の痛い話だろうなと理解しつつ、ちらりと彼の横顔を覗き見る。作られた笑顔の奥に覗く負の感情を読み取ってAはげんなりと顔を歪めた。
「僕まだ若くて発展途上なんですよ。筋肉も身長も、まだまだこれからなんで。」
「こら、先輩だから。」
Aがそれ以上の失言を防ごうと月島の後頭部をはたく。叩かれた後頭部を片手で押さえて「なにさ、」と不機嫌そうに月島は呟いた。
「悠長なこと言ってると、あのチビちゃんにいいとこ全部持っていかれるんじゃねーの？同じポジションだろ？」
そんな、いつも通りの黒尾の煽り言葉。けれど先ほどと違って、月島はそれに反論することはなかった。黙ってその言葉を受け止め、数秒の沈黙の後に不自然な笑顔を黒尾に向ける。
「それは仕方ないんじゃないですかね。日向と僕じゃ、元の才能が違いますからね。」
「(……ヘンな反応。)」
なにやらいつもと様子の違う月島に、Aは不思議そうに眉をひそめた。
・
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 516人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
希(プロフ) - 130羽の三大が三台になってます。たぶん三大だと思います。 (2017年7月18日 21時) (
レス) id: b9f12d00ff (このIDを非表示/違反報告)
光希(プロフ) - ページ29の"低空飛行"が"低空引こう"になってますよ！ (2016年12月26日 17時) (レス) id: 476a1e2e74 (このIDを非表示/違反報告)
花宮幸ヤ(プロフ) - ミッキーさん» 長い間レスできずに申し訳ないです…。そちらの方を長い間更新止めててすいませんでした(；-；)これからコツコツがんばりますので、これからも見ていただけたら幸いです(´×ω×`) (2016年8月3日 13時) (レス) id: 16a4b4f29a (このIDを非表示/違反報告)
ミッキー - テニスの王子様の更新をしてください！楽しみにしてます。 (2016年7月24日 19時) (レス) id: f565134c71 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - 汐李さん» ノンノンノン！← 赤葦、木兎さん、リエーフ、夜久さんが好きなのでそれぞれ字を取りました（*´ω｀） (2016年3月22日 23時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤兎リエ輔 x他2人 | 作者ホームページ：http://nekomoti
作成日時：2016年2月27日 3時
