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「わ、本当に将明くんだ…久しぶりだね」
ハイヒール特有の軽快な音をたててこちらに近づいて来る。
周りにあるイルミネーションより、彼女の方が圧倒的に綺麗なのは言うまでもない。
「…どうしたの?また泣いてたの?」
「えっ、ああごめん、そういうわけじゃ」
彼女が俺の顔を覗き込む。また、というのは高校の卒業式の日のことだろう。あの日の号泣っぷりは正直酷かったと思う。
俺は慌てて少し涙ぐんでいた目を拭った。
思い返せば、いつも恥ずかしいところばかり見られている気がする。また自分が嫌になったような気がして、罪悪感に蝕まれた。
「ティッシュ、使う?」
「……ありがと」
ぶっきらぼうにそれを受け取ると、Aちゃんはふふ、となんだか嬉しそうに笑った。
「将明くん、本当に変わってないね」
その言葉は、俺の心にゆっくりと溶けていった。まるで今の俺自身を呪うかのように。
…変わってない?俺が?
「そうかな、そんなことないよ」
本当はもっと話したいことがたくさんあるのに、言葉が上手く出てこなかった。
かなり動揺もしていたし、なにより、
こんな自分のままで、彼女の前に姿を現したくはなかった。
「ごめん、俺そろそろ行かなきゃだから」
じゃあね、と吐き出すように言いその場から立ち去った。彼女は名残惜しそうな顔をしていたが、知らないふりをした。
今日までずっと会いたかった人。
会いたいという感情で終わらせておけば良かった。
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ma(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます!千葉ちゃんメイン少ないですよね(笑)そう言っていただけて嬉しいです、頑張ります(^.^) (2019年12月12日 20時) (レス) id: fc77e0e2fe (このIDを非表示/違反報告)
ma(プロフ) - リカさん» ありがとうございます、、!これからも応援してあげてください(笑)更新頑張ります^^ (2019年12月12日 20時) (レス) id: fc77e0e2fe (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 中々千葉ちゃんのお話を見かけず、やっと出会ったこの作品!更新待ってます(*´`) (2019年12月12日 0時) (レス) id: 911787e19f (このIDを非表示/違反報告)
リカ - 更新楽しみにしてます!毎回、千葉ちゃん!!って応援したくなるくらい引き込まれます(笑)続きが気になります! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 4a7cb51f4d (このIDを非表示/違反報告)
ma(プロフ) - なぁさん» ありがとうございます…!そう言って頂けると本当に嬉しいです。気怠い感じを表現できているのなら嬉しいです^^(笑)気まぐれ更新ですが、今後もよろしくお願い致します。 (2019年12月8日 13時) (レス) id: fc77e0e2fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ma | 作成日時:2019年11月21日 22時