初めての一目惚れ 2 【及川徹】

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「俺は２年前、

Aが嫌いで振ったわけじゃない」



嫌いで振ったわけじゃない…？

嘘だ、そんなわけない。



「引退試合の日、

俺は海外でプレイすることを決めたんだ。

何度も何度も自分の目の前が真っ暗になって

何を目指してるのか自分でも分からない時があった。


けど試合に負けて、そのとき思ったんだ。

もっともっと続けたい、ここで終わりたくないって」



その言葉にわたしは気付いた。

わたしは知らないふりをしてたっていうことを



あの引退試合の日

いつもとは違う雰囲気に“ 怖い “と感じて

それが“ 決意 “だと気付いてたのに

知らないふりをしてたんだ。
　



「続けるなら俺は全員を倒したい。

何年かかるか分からないし、

Aを幸せにしてあげられる自信もなかった。


だから、俺はAが他の人と幸せになってくれたら

って思って振ったんだ。

それが俺の幸せだと思ってたから」




『…自分勝手です』



「うん、わかってる」



『わたしは及川さんじゃなきゃ幸せになれないし

付き合ってる時すごく幸せでした。

だから幸せにできないなんてそんなことないです。

それに、何年かかっても私は待てます』



何年かかるかなんて誰もわからないし、

わたしは及川さんが頑張る姿を側で応援したいから。



「けど、Aはあと４年も大学があって

寂しい思いばかりさせちゃうと思うんだ」



わたしの頬を撫でながら話す及川さんは、

申し訳なさそうで

そういえば話してなかったなと思いながら



『わたし、大学には行きません。


昔話したように今でも変わってないんです。

いろんな人と演奏してわたしは成長したいから』


そう言って微笑めば、

及川さんは手で顔を覆って、


「俺ら似てるね」


久々に見る及川さんの笑顔に

わたしも自然と笑顔になって2人で笑い合う。




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