流石にこの歳はきちぃ 【d！】

''エペ'' ページ26

「笑止千万！少年よ！君は新たなる火種を生み出してしまったのだ！」

「バッターリア国に戦争を挑んではならないと言われているのは何故か知っているか？」

「地形が守るのに適していて敵からは攻めにくいからだ」

「そして､何より物資も戦力も豊富だからだ！」

「我が国は魔法を扱うのも武術を扱う者も優秀な方々が多い」

「故に！過去に挑まれた戦争は全て勝利を収め､100年以上､我々バッターリアは生き残ってきたのだ！」

「君の軽率で下らない､小さな行為のせいで､多くの命が失われるだろう！」

「さぁ､覚悟を決めろ少年！君の手で､君のような矮小な存在のせいで！」

「2つの国の､罪無き人々が命を落とすだろう！！」



笑いながら､嗤いながら､哂いながら､嘲笑いながら

彼女は語った

それは本来の彼女ではなく

既に消え失せた筈の"彼女"の言葉

人を嫌い

恨み怨んで

国をも憎んで憎悪となった

それは悪であることには違いない

しかし濁ることは無いのだ

"純粋な悪"は何よりも危険となる

例え､宿主を蝕んでいたとしても



「かはっ」

口元を抑えると､掌は赤く染っていた
気付けば､攻撃を受けた側の視界が赤い
目元を触れば､指先も赤くなった

「かッ…はははっ…！」

あぁ､可笑しいオカシイおかしい
脆い､もろい､脆すぎる
人とはこうも弱いものか

「…良かったな」
「ヒッ…」
「"此奴"はそこまで怒ってないぞ｡物理的にも社会的にも死ぬことは無いだろうよ」

腰を折り､ずいっと"エペ"は顔を近付け嗤った｡
生徒は顔を青ざめさせ､怯えて背後に後ずさった｡

「本当に､"此奴"で良かったなぁ？"ワタシ"だったら殺していたのに…残念だよ」

"エペ"の顔の半分は血に濡れていた｡
そのまま前髪を搔き上げたために､美しい髪は血で汚れる｡

「後悔しろ､恐怖しろ｡貴様の行動ひとつで､多くの人間の命が損なわれるかもしれないという可能性を」
「貴様のような低脳が､国を相手取ることなど出来ないのだから」

そう言うと､彼女はふらりとバランスを崩す｡
慌てて近くにいた教官が抱き止めれば､彼女が気絶していることに気付く｡

教官たちは受け持ちの生徒たちに待機するよう指示して､慌ただしく行動し始める｡
彼女の治療に回る者､生徒の所業を学校側に報告する者､国に報告する者､生徒の家に連絡する者､と｡

生徒は､所属するクラスの代表に連れられて校舎へと戻っていった｡
そして､一連の流れを見ていてある事を企てていた者も…

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