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「…んあ?」
『起きたか、中也』
「!A兄さん!?…俺ッ」
中也は顔を真っ青にして跳ね起きた。
そんな姿を見てAは苦笑した。
『大丈夫だ。中也はどうだ?』
「俺は…別に…。そんな事より、A兄さんの事…俺が…」
目尻に涙を溜めた中也の頭に優しく手を置き、Aは微笑んだ。
『気にしなくて良いって。これで死 ぬ程、柔い身体をしてない事ぐらい知ってるだろ?』
渋々頷いた中也の頭をぐりぐりと撫でる。
すると、医務室のドアが開いた。
「A大丈夫かえ?」
「A兄さん!」
『治、姐さん』
入って来たのは中也より一足早く目覚めた太宰とAの事を聞きつけた尾崎紅葉だった。
太宰は入って来た瞬間にAに抱き着く。その姿を見て紅葉は優雅に微笑んだ。
「べったりじゃな。Aの童は」
『お陰様でな』
紅葉とAの二人が揃うととても絵になる、この前森が云っていた事を思い出し、太宰と中也は納得した。
なんというか、気品溢れる、美しい雰囲気が漂っているのだ。
「…それより、怪我は大丈夫なのかえ?かなり酷いと聞いたのじゃが…」
『もう大丈夫だろ。すぐ治るさ』
「無理はするなよ」
『有難う』
痛々しい痣や傷、包帯を見て紅葉は顔を顰める。けれど、Aは何も気にしていない様にニッコリ笑った。
太宰と紅葉安心したように肩を撫で下ろす。しかし、中也の顔は依然として曇ったままで…
*
「…A兄さん」
『なんだ?』
その後、太宰と紅葉が出て行った部屋で中也がポツリとAを呼んだ。
「…本当に、御免なさい」
聞き逃してしまいそうな小さな謝罪だった。
『珍しいな。中也らしくないぞ』
「…だって」
つついたら今にも崩れてしまいそうな程萎れた中也の頭に優しく手を置き、そのまま撫でた。
責任感がある、真面目な中也にとってはかなり応えたのだろう。そんな時は何を云っても無駄だし、何を云えば良いのかも分からない。
少しでも癒えることを願いただただ頭を撫でた。
『…気にするな。ここで心折れたら元も子もないだろう。これからこれ以上に過酷な事がある。こんな事で負けるな』
淡々と話す声には何処か温かい優しさが入り交じっていた。
それが通じたのか中也はこくりと頷いた。
『いい子だ』
彼の"恩師"と云えるのかは分からない。
けれども。
『(…焦らずにゆっくり進めば良い)』
自分なりのペースで。
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菜月羽(プロフ) - とくさん» 初めまして!貴重なご意見有難う御座います!了解致しました! (2018年3月22日 8時) (レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
とく - 初めまして。イメージ画像は見たい人が見ると言う形にしてもらえませんか? (2018年3月22日 6時) (レス) id: 1a488f8aaa (このIDを非表示/違反報告)
菜月羽(プロフ) - チョコレートさん» 良かったです!有難う御座います!またリクエスト有りましたら何時でも!これからも頑張らせて頂きます! (2018年2月6日 20時) (レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 菜月羽さん» めっちゃ面白かったです!!ありがとうございます!!これからも頑張って下さい!!応援してます! (2018年2月6日 20時) (レス) id: 66cc8ffaf1 (このIDを非表示/違反報告)
菜月羽(プロフ) - チョコレートさん» 有難う御座います!頑張ります!リクエスト了解しました! (2018年2月3日 7時) (レス) id: 386948e46a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜月羽 | 作成日時:2017年12月4日 16時