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「はい、どうぞ。」
「……ありがとう、」
机の上に置かれたのは分厚い辞書。
表面には丁寧な文字で전정국と書かれてる。
私の席の前でニコリと笑った彼は「じゃあまたね」と自分の席へと戻って行った。
私は窓側の1番端の後ろ、グクは廊下側の1番端の前で正反対の位置にある。
そのため彼がその場を離れた途端に周りの女子は狙ってたかのようにコソコソとし始めた。
…ああ、嫌だなと顔を歪める。
私は周りの声を聞かないようにイヤホンを耳に嵌めた。
*
「じゃあ辞書開こうか〜」
現文の時間。
ソクジン先生が「忘れた人は正直に手上げてね」と言う中、皆は自分の手元にある辞書を開く。
ページをめくる音が聞こえてきた時、視界の隅で手が挙がったのが見えて私は口を噤んだ。
…グクだ。
指先まで綺麗なグクが手を上げるとクラス中の視線は意図も簡単に彼に集まる。
ソクジン先生が「やー、珍しい」と感嘆の声を漏らした時、私は手元にあるグクの辞書に無意識に力を込めた。
「グギが忘れるなんて珍しいなあ」
「ちょっとうっかりしてて」
グクがお茶目に笑うとソクジン先生は軽く「次は気をつけて」と言って予備の辞書を渡した。
その様子を見てたクラスの子がザワつく中、1人の子がポツリと言葉を落とした。
「…Aちゃんに渡してるの私見た。」
その途端、波紋のように広がった視線はグクから私に移った。
コソコソと聞こえる声は今はイヤホンで防げない。
「ジョングクくんが可哀想」「幼馴染だからって図々しいよね」「ジョングクが迷惑がってるのに気付かないの?」「アイツが怒られるべき」
ぎゅう、と辞書のページを握る。
私にしか聞こえないように呟かれた言葉達はソクジン先生の「話やめてねー」という声で消えていった。
…その日の授業は頭に入らなかった。
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咲綺(プロフ) - 続きが見たいです!! (2020年5月23日 22時) (レス) id: a2e0669daa (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか?めちゃ気になります! (2019年12月6日 18時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
ぐろす - けっこー経ちましたけど更新しないんですかー?楽しみにしてまーす! (2019年12月6日 17時) (レス) id: 63cd4095fc (このIDを非表示/違反報告)
Pちゃん()(プロフ) - 続き書かないんですか? (2019年10月16日 0時) (レス) id: 00ec3437ee (このIDを非表示/違反報告)
カナタ(プロフ) - とても面白いです!!ヤンデレグクちゃんたまりません。シスコンジミちゃんにも守ってもらって、優男テヒョンにも守ってもらえて主人公ちゃんが羨ましいです(笑)更新楽しみにお待ちしてます! (2019年8月15日 0時) (レス) id: 202f553fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飛鳥 | 作成日時:2019年6月12日 23時