かつての親友の赤と 結 ページ26
ただ、女嫌い、という噂の前には、昔のようにスルーということが出来なかった。
やはり、そこは私の一番変わってしまったところなのだろうな。
必死で取り繕って、彼に嫌われないように。
あの人の前では、昔の自分でいようと努力しているのだ。
手に入れた女の子らしさも、昔の素の自分も、全部、嫌われないように程々の武装として残して。
どうやら彼は、まだ私を受け入れきれていないのだから。
｢お！トントーン！｣
放課後、校門に向かって歩く彼の後ろ姿を見つけた。
その背中に思い切り駆け寄って、右手でその背を思い切り叩く。
｢いってぇ！！何すんねん！｣
｢ふっふっふ。私からの、激励だよ｣
｢いや、なんの｣
｢え〜、よく分からん｣
なんやねん、そう小さくつぶやく彼は痛そうに背中をさする。
『女嫌い』。
その噂の真相は未だに確かめられないでいる。
実際はそんなことは無いのかもしれない。
でも、もし聞いてしまって、本当だとわかったら？
彼は優しいから、面と向かってそんなこと言わないかもしれない。
でも、逆に裏表がそれほどない人間だからこそ、嫌いなら嫌いとはっきり言うかもしれない。
否定されることが怖いから。
彼の友人で居続けるために、私はまた、『男勝り』というかレッテルを自分に張りつけていくのだ。
｢トントンは、私と居て楽しい？｣
｢なんや急に｣
｢んー？気になっただけ。で、どうなの？｣
｢それ、本人の口から聞くもんなんか？｣
眉間にまたシワがよる。
｢まあ、そうやな。楽しくないわけではないけど、ホンマにあの時の、男だと思ってた友だちなんかなって、まだ受け入れきれてはないな…｣
｢それ、本当なんだけどなぁ…｣
｢うん、分かってる。分かってるんやけど、気持ちの問題やな。でも｣
そこで少し言葉をにごらす。
｢でも、今のお前は無理してるようにしか見えへんねんな｣
｢どっちがお前の素なんか？A｣
｢…どっちでしょうね？｣
この微妙な距離感、まだまだ続きそうだ。
続く
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作者名：にこ† | 作成日時：2020年3月31日 10時
