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｢…い、おーい｣
｢はっ…！｣
声をかけられて、外の世界に思考が戻される。
いけない、つい、考えふけってしまった。
｢ご、ごめん。なんか話してた…？｣
｢…いや。別に。大事なことやないから、気にせえへんでええよ｣
｢そりゃよかった｣
｢あ、あのさ…｣
勇気を出して聞いてみようとした。ちょうど口を開いたと同時に、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。
｢予鈴や。あー…なんか言いかけとったな。後でもええか？｣
｢んっ。あ、いや、私のも特別な事じゃないから全然いいよ。大丈夫｣
｢そか、じゃあ｣
｢うん、またね｣
｢Aちゃんって、見た目に反して結構、活発だよね｣
｢そう？｣
転向してから約１ヶ月。友だちと呼べる存在もそこそこ出来て、学校に馴染み始めた頃。
休み時間の多くを、同性の友人と過ごすようになった。
彼とは、たまにしか話さなくなった。
｢うん、だって、髪長いし可愛らしい顔なのに言動がちょっと男の子っぽいっていうか…、なんか、少年って感じ｣
｢あはは、そんな事ないって〜…。まあ、小学生のころは、よく木登りしたりしてたし、髪短いし口悪いしで、男に間違えられていたけど…｣
｢なにそれ。ちょっと気になる｣
｢え〜、別に面白いこと何もないよ…？あ、ただ…｣
小学生の時のあの、印象深い出来事を思い出してしまい、少し口を滑らせてしまった。それを聞き逃さなかった友人に、問い詰められ根負けしてぼかしながらも一連の流れを離した。
｢なにそれ！めっちゃウケる。ていうか、AちゃんもAちゃんで何やってんよ…｣
｢色々やらかすお年頃ってことで…｣
見逃してくださいと、手を合わせれば笑い出す友人。
ひとしきり笑ったあとでも、と言葉を続ける。
｢なんか、今のそれは無理してるようにも見えるんだよねぇ。なんかあるの？｣
｢へ…、そんなふうに見える？｣
｢うん｣
｢まじかぁ…｣
そりゃそうだ。
引越しをしてから、男勝りな女の子はあまり、というか、その時周りにいた人たちにはとても評判が悪かったのだから。
女の子なのにそんな事するんだ、男子ウケするとでも思ってるの、もうちょっと喋り方くらいちゃんとしたら。
そんな言葉が私にのしかかってきた。
だから、嫌われないようにそこそこの人間関係が作れるように。
ダメなところは直してきた。
そしてあわよくば、彼と再会した時に、ちゃんと女の子として出会えるように。
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作者名：にこ† | 作成日時：2020年3月31日 10時
