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教室内へと入ってきたのは、うちのクラスの男子たちよりは背の高いスラリとした男。
地毛なのだろうと、確信が持てる金色の髪を微かになびかせる。
細い黒フレームの眼鏡のレンズの奥から覗く、切れ長の瞳。

誰がどう見ても、安易に言えばイケメン、もっと言葉巧みに表現するのであれば、まるで絵画のような美しい整った顔立ち。その顔に私は見覚えがあった。どう足掻いても忘れようもないその顔。
手短に自己紹介を済ませた彼はまだ、私には気づいていないようだ。
それは仕方がないことだ。でも、それでいい。
だって彼と仲の良かったあの時の私は。

「席は、窓際の一番後ろの席が空いているからそこに座ってくれ」
「うむ」
「…え」

小さく声を出して動揺してしまった。その担任の言葉に、一気に意識が彼のほうへと向く。
窓際の一番後ろ。そこは、私の真後ろの席。
まずい、やめてくれ。気づかないでくれ。
その一心で、机の上に顔を伏せる。つかつかと歩いて席に向かってくる彼が真横を通り過ぎるその瞬間、少しだけ彼の方に視線だけを向ける。
こちらの方へは一切目もくれずに、指定された席に向かっていく。
良かった。

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作者名:にこ† | 作成日時:2020年3月31日 10時

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