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「せやなぁ…」
少し考える素振りを見せてから、もう一度こちらを見すえる。
「お前に興味があるから。それじゃダメか?」
「―は」
何言っているんだこの人。またお前は私の悩みの種を増やすのか。
何故かうるさくなった心臓の音。嫌いだ。
かく言う彼は顔色一つ変えずに、自分の席へついてしまう。
表示されている、彼のプロフィール画面をマジマジと見つめる。
よく分からんまんじゅう頭のアイコンに、昔、呼んでいたあだ名のニックネーム。どちらも見覚えのあるもの。
彼は何一つ変わってはいないのだ。
変わってしまったのは私の方で。
それから特に何か起こることも無く夏休みを迎えた。
「暑い…アイス食べたい…」
ダラダラと刺激の少ない毎日を過ごす。冷凍庫を空けると、アイスの姿はそこにはなく、冷凍食品だけが「残念だったな」とでも言うように見つめてくる。
そんなわけないと突っ込まれてしまいそうだが、それだけで暑さに頭がやられているのだろう。
コンビニ行くために支度をする。それすらもダルいが、それ以上にアイスを食べたいという思いが勝っている。シンプルな白のプリントTシャツにショートパンツ、そして花の飾りだけがついたシンプルなサンダル。伸ばした髪の毛は汗で張り付かないように、一応ポニーテールにしておく。かと言って何かアレンジをする訳では無い。
こう、衣服に無頓着というか、ズボラなところは昔から変わらず。どうせ近所のコンビニに行くだけだし、そうそう知り合いに会うとかそういうことは無いだろう。
別にこれはフラグではない、決して。
「あ」
「ん?」
前言撤回、回収した。
店内に入った瞬間、買い物をしている知り合いを見つけてしまった。見てしまっただけなら隠れてしまえばいいかもしれないが、うっかり声を出したからか、自動ドアの音に反応したのかこちらに気が付かれてしまった。
しかも一番会いたくない相手。
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作者名:にこ† | 作成日時:2020年3月31日 10時