来訪者 ページ29
さて、今日は最近薄々感じていたことを、どうにかしてグルッペンに問うてみようと意気込んでみた。
みたのだが、やはり総統室に行くのはかなり足が重たい。どうしたものか。
しかし私の悩みは深刻である。
そう、これはここに来た時点で起きていた問題だ。
お金をどうすればいいのかが全くわからないのだ。
ここに来て2週間がそろそろ経とうとしている。なのに私は初日にゾムさんに借りを作ってしまい、その後街に出ることがなかったため、お金を使う機会がなかったのだ。
それもありすっかり忘れていたのだが、お金の問題はそう急に解決せねばならないと気づいたのである。そう意気込んで、部屋から出ようとする。
｢匿ってくれ！！！｣
そして目の前に飛び込んできた、金髪に黒い軍服の男。
そう、今まさに訪ねようとしていた人物。
私の部屋に勝手に飛び込んできたかと思うと、流れるように部屋の鍵を閉め、何故か私の手を引っ張りクローゼットに隠れる。
｢ちょっ！？グル―｣
ッペンさん、何やってるんですか。
そう怒鳴ろうとして口を抑えられる。
｢静かに｣
そう一言言われただけだが、その圧に声を出すことを諦め押し黙ってしまう。
廊下から走っている足音と｢アイツどこ行ったんや…！｣と、怒りをあらわにしているトントンの声。
何やっているんだこの人、とグルッペンの顔を見上げると、なぜだか｢ふっふっふ｣と笑っている。
しかし顔が近い。冷静を保つため視線を逸らす。
トントンの足音と声が遠ざかっていく。
｢…行ったな｣
そう言ってクローゼットから出る。
｢助かったぞ｣
にんまりと笑うグルッペン。
しかし何故追いかけられているのだ。
｢いやなに、勝手に期限決められてやれと言われていた書類を3つほど納期守らなかっただけだ｣
しれっとまるで、当たり前の事かのように言われた。
｢いや、それダメなんじゃないですか？｣
｢別にいいだろ。本来の締切にはまだ間に合う｣
｢んん…、あー…ト｣
｢しーっ！！しっ！見逃してください、お願いします｣
インカムでトントンに連絡しようとしたが、寸前で止められてしまった。
けどこれ、見逃した所で後で見つかったらグルッペンが大変なことになるんじゃないのだろうか。
｢俺にだって深い、それは、もうマリアナ海溝ばりに深ーいわけがある訳で…｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
