外交官の真意 ページ28
そう言って、ケーキスタンドを少しこちらにずらしてくる。まるで、食べていいよと言わんばかりだ。
｢せや、このマカロン絶品なんよ。おひとつどうぞ｣
｢では…｣
そう言われピンク色のマカロンを選ぶ。
｢イチゴやな、シンプルだけどほのかな甘酸っぱさがとてもいいんよ｣
サクリとかすかに音がなり、口いっぱいに優しい甘さが広がる。
｢〜〜！！おいしい…！！｣
昔お菓子チェーン店で買ったマカロンより、とても美味しい。甘さも丁度よく食感がいい。
その顔を見たオスマンが、まるで自分の事のように嬉しそうに笑う。
｢ふふふ、喜んでもらえて良かったわ。甘いもの好きな女の子に悪い子は居らへんからな｣
他にもあるから、色々食べてと他にもいくつもお菓子を差し出された。
そしてそれらはどれも絶品で。
毎回毎回、驚いたり喜んだりする私を、まるで小動物でも見るかのようにオスマンに見つめられていたのは言うまでもない。
どこのケーキが美味しいだとか、ここのクッキーは格別だとかそんな会話を楽しみ、お茶会もお開きとなった。
｢いやぁ、久々にええ息抜きになったわぁ｣
｢突然お邪魔してしまって、すみません。でも、私もすごく楽しかったです｣
｢いいんよ〜。俺も楽しませてもらったわ。それにやっと君とまともにお話できためう｣
そう言うと、1枚のメモを差し出される。
｢今度は、ちゃんとお誘いするから、またお話しようや？ね？｣
そのメモには彼のものと思われる連絡先。
｢…！はい！｣
それを受け取り、ぺこりと頭を下げて薔薇園をあとにした。
｢ね？あの子素直な子でしょ｣
｢ん？まあ、せやね。及第点や｣
後ろから掛けられた声に、振り返らずに答える。
オスマンの背後から白い軍服を身にまとったひとらんが現れた。
｢確かに今日は、とっても楽しめた。けど、俺はまだあの子を信用した訳では無いからな？｣
深緑の瞳が白い男を見る。
そこには先程までの、穏やかな顔はなく。
｢らんらんにしては珍しいんやないの？そこまで人を信用するようなやつやったけ？｣
｢そんなことないよ｣
｢俺は俺であの子を判断する。それに変わりはないで｣
そう言って、オスマンは薔薇園を後にした。
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
