お茶会 ページ27
ここに来てから一週間がたった。
毎日ロボロとのトレーニングにエーミールとの勉強会。忙しいようで、意外と時間を持て余すことが増えてきた。
そうだ、今日はランニングの時に見かける薔薇園にでも行ってみよう。
昨日ひとらんが、いい感じに咲き始めていると言っていたな。もしかしたら、会えるかもしれない。
そんなふうに思って、今日は白のブラウスに膝丈の紺色のスカートを履く。少しオシャレをしてみよう。薔薇には見劣りしてしまうが、少しくらい可愛くしたっていいだろう。
渡り廊下の方から出ると、その薔薇園が近くに見える。
これも数日、周囲を走って発見したこと。
少しだけ、内部の作りに詳しくなった。
近づくにつれ、薔薇の上品な香りがふわりと漂ってくる。
温室の薔薇と晴れた空のもとに咲いている、薔薇のテラスがあるらしい。まだ実際には見た事ないのだが、ひとらんが主に手入れをしていると聞いて、さぞ美しいのだろう。
薔薇でできた幾何学模様の道を進んで行くと、薔薇の香りに混ざって、甘い匂いがしてくる。
｢いい匂い…｣
その香りにつられて、気づくとそちらへ足を運んでいた。
｢あ、Aちゃんやな｣
｢あ、えっと。オスマンさん｣
｢ん、正解。よお、覚えとったな｣
名前を言うとオスマンは嬉しそうに、その細い目をさらに細めた。
ティーカップを持ち、クッキーを食べている様はまるで乙女のよう。
｢んふふ。なんや、そんなじぃっと見つめて。遠慮せんといてこっちおいで？｣
そう言ってカタリと席を立ったオスマンに手を引かれ、そのまま向かいの椅子に座らされる。
そして、ひっくり返されていたティーカップに紅茶が注がれる。
｢アールグレイ、Aちゃんはお砂糖とミルク入れる？｣
｢あ、はい｣
上手く状況が飲み込めないまま、聞かれたことに答える。
トポトポと砂糖とミルクが入れられ、紅茶が差し出される。
｢ありがとうございます｣
｢いやぁ、こんな所で君に会えるとは思わんかったわぁ｣
そう言って頬に手をついて、こちらをニコニコと見つめるオスマン。
｢今日は久々に時間が出来たから、一人でお茶会してたんよ｣
｢一人で、ですか｣
｢そ、一人で。いつもやったら、グルッペンとか誘うんやけど、提出してない書類があるとかで、トントンに監視されとったわ｣
そう言いながら、くつくつと笑うオスマン。
｢でもな、なんとなしに今日は一人じゃない予感がして、二人分用意してみたんやけど…。ふふ、正解やったな｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
