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「あぁ……悪かったな、縛って。でも俺がいない間にAが不安になって逃げないようにするためなんだ。わかってくれよ」

 は? と私は声を上げた。意味がわからない。どうして縛られるのを許容しなきゃいけないんだ。

「……陸太郎、今すぐこの目隠しを外して」

 まだ目隠しはされているから、陸太郎の表情がうかがえない。それに、出口の位置やら何やら、周囲の状況が確認できない。

「……どうしてそんなことを言うんだ」
「え?」
「あぁ、分かった。目隠しを外したら逃げる気なんだろう」

 当たり前だ。

 が、その反応で、私は一つ察しがついた。

「違うよ……陸太郎の顔を見て話したいだけ」

 息を吸う音が聞こえた。A、と震える声が私の名を呼ぶ。やがて私の顔に手が触れると、目を覆う布がほどかれ、光が目を刺した。

「……A、やっぱりそうだったんだな」

 違うけれど、肯定するように私は、滲むように笑う陸太郎に薄く微笑んだ。

 ーーおそらく陸太郎は、大きな勘違いをしている。陸太郎は、『私が陸太郎に好意を寄せている』と思っているのだ。
 だから、私を連れ去った。
 そこまで発想が飛躍することが末恐ろしいけれど、おそらくそう。ならばこのまま油断をさせて、その隙をついて逃げるしかない。
 まずはなんとかして手足の拘束を解く。

「陸太郎、ここはどこ?」

 つとめて柔和な声。世間話でもするみたいに。陸太郎は私の手を取ると、指先でそれを撫でながら少し笑った。

「ここは川沿いの廃屋だ。誰も来ない、俺とAだけの空間だよ」
「とっても、素敵だね」

 なんて最悪だ!

 さり気なく周囲を見回すと、どうやら時間帯はもう深い夜のようだった。隙間から漏れる闇が、より一層陸太郎の異常さを引き立てているようだ。

「……私以外の女の人たちはどこにいるの?」

 陸太郎はわずかに目を見開いたけれど、すぐに私を安心させるように笑って、私の頭をなでた。

「心配しなくても大丈夫だ。奴らは俺を拒絶したから、すぐに殺したよ」

 ぴし、と私の心が凍りついた。
 陸太郎は何でもないふうに続ける。

「証拠が残ると困るから、とりあえず川辺に埋めておいた」

 怒りと恐怖が腹の底からこみ上げてきそうだった。私があの瞬間、陸太郎を拒絶するような言葉をかけ続けていたら……私は今頃、土の中にいたかもしれないのだから。

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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