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陸太郎はひとしきり私の指先やらを撫でて満足したのか、続いては私のお腹に顔を埋め、ぽつぽつと話をしだした。
内容は主に、これまであってきた不幸な出来事ーー両親が厳しい人で、長男の自分に全期待がのしかかってきたこと、でも弟のほうが優秀なこと、家を飛び出したけれど寂しくて仕方がないこと、……ゆえに手を出した女の人に振り向いてもらえなかった沢山の経験。
孤児として生きていて、明日の食べ物も保証されていない生活を送っていた私からしたら呆れるほど幸せな生活だ。
「A……。俺さぁ、俺、これまで頑張ってきたんだよ」
「うん、辛かったね。大丈夫、私は分かってるよ」
満たされたように肩を揺らす陸太郎、嘘をついているのにわからないのだろうか。無惨さまだったら、すぐに気がつくのに。無惨さまは人の悪意や、人の嘘にとても敏感な人だから。
無惨さまは私を見ている。私を知っている、私よりも。きっと私に好きな人が出来たら、無惨さまは私よりも先に気がつくのだろうなぁ。
「……A、ここで一生暮らしてくれるよな」
「え……」
がば、と陸太郎の顔が上げられる。しまった、返事が遅れた。私がとっさに微笑むも、陸太郎は不安そうな顔で私の二の腕を、肩をつかみ、揺さぶる。
「なぁ、A……Aはありのままの俺を好きなんだろう？」
答えようとしたら陸太郎の顔が迫ってきた。何をする気なのかを咄嗟に察する。熱い息が口元にかかった途端、全身に嫌悪の鳥肌が立ち、私は反射的に陸太郎の胸を押しのけてしまった。
陸太郎はわなないた。わなないて、顔を上げて、ぎょろりとした目で私を見た。
「……A、なあA、俺を裏切るはずないよな、A……」
ぶつぶつとA、とそんなはずは、と繰り返しじりじりと私と距離を詰める。私は後ずさるも、すぐに壁にぶつかってしまい、陸太郎と壁の間で追い詰められる。
陸太郎は仄暗い瞳を細めると、私の服を掴むとそれをたくし上げ、足を弄ってきた。私がじたばたと暴れると、陸太郎はそれを押さえつけ触ってきた。ふたたび全身に鳥肌が走る。嫌だという思いが心臓から滲んで、涙が溢れて。
ーー助けて、無惨さま。
そう、呟いた瞬間。
びしゃっと水音がして、私の上に乗っていた重さがふっと消えた。
身体にふりかかる生温かいもの。赤いもの。
「……あ」
顔を上げた。
そこには、額に青筋を浮かべる無惨さまがいた。
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モブちゃん - 無惨様、優しい！マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (
レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです！というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く！素敵な作品ありがとうございます！ (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…？！ (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年10月22日 21時
