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 再び街への買い出しを頼まれた日。

「……あ」

 陸太郎の働く茶屋に入ると、再び混雑した店内で冨岡義勇さん、彼の相席のみが空いていた。
 陸太郎が気にするような視線を送ってくるけれど、私は構わず彼にまた相席でも良いかと尋ねた。

「構わない」

 むしろ好都合だ、と彼は言う。
 好都合……? 首を傾げるけれど、冨岡さんからそれ以上答えが返ってくる気配は無かった。

「冨岡さん、冨岡さんはなぜ帯刀しているのですか」

 みたらし団子を頬張りながらたずねると、冨岡さんは一瞬私を見て、すぐにお茶の水面へ視線を落とす。

「必要だからだ」

 はぁ、と返事をする。どうやら冨岡さんはとっても合理的な人間らしい。合理的すぎて、言葉が足りない。私が気になるのはなぜ必要なのかという点なのだけど、まあこれ以上は聞かないとしよう。

「冨岡さん、この前の事件の話、もう少し詳しく聞いてもいいですか」

 ずっとずっと、私の心の端っこでつっかえていたそれをたずねる。もしかして、という言葉と一緒に冨岡さんに言われた事件のことがふと脳裏に過るのだ。

「……被害者の女性は全部で4人」

 冨岡さんは、声を潜めて語りだす。ともすれば、やっぱりがやがやした騒音に紛れてしまいそうなのに、意識をすれば驚くほどすっと耳に入ってくる、不思議な声だ。

「4人すべてが長い黒髪に張りのある身体、小柄な背丈だ。年齢もみな15歳。昼間に出掛け、帰ってこなかったらしい」

 4人に共通点が多い。つまり、その4人の共通点のどこかに、犯人の標的になる特徴をもっている可能性が高い……。
 私は一つ閃いて、冨岡さんを見やった。

「冨岡さんはこの事件の犯人を捕まえようとしているから、この茶屋に来ているんですね」

 冨岡さんはお茶を飲む手をとめ、鋭さを孕んだ瞳でこちらを射抜く。

「だから茶屋に来てもお団子も、あんみつも、何も食べずに一人で座って、お茶だけを飲んでいる。一人席に座れば良いのに二人席に座るのは、隣との距離が近いとすぐに刀が抜けないからですか?」

 冨岡さんはすっと目を細める。やはり彼は合理的な人間だ。合理的な人間だから、行動のすべてに無駄がなく、すべてに理由がある。

「もしかして……冨岡さんは、犯人の目星がついているのですか」

 犯人、のところでわずかに瞳が揺らぐ。
 凪いだその瞳にうつるのは、気丈に微笑む私の顔だった。

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モブちゃん - 無惨様、優しい!マジで素敵な作品です。更新、頑張ってください。 (2020年11月8日 21時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 無惨様大好きです!というか鬼陣営好きすぎるので、鬼贔屓な作品は本当に嬉しくて…しかも内容も面白く!素敵な作品ありがとうございます! (2020年7月6日 22時) (レス) id: 0b12b82150 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 好きですありがとうございます (2020年4月25日 3時) (レス) id: aef362accb (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - そこらへんの小説なんかより面白すぎて泣いてます…天才ですか…?! (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2bb340e5dc (このIDを非表示/違反報告)
hina - ああああああ神なんですか!?いや神なんだよねそうに違いない (2020年1月20日 18時) (レス) id: c01e14d75d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりんの木 | 作成日時:2019年10月22日 21時

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