第三十九話 ページ40
*
はぁ、とため息が漏れる。
この仕事についてはじめて、トムラさんにあんなに怒られてしまった。それもそうだ。私の勝手な行動のせいで危ないことに巻き込まれてしまったんだし、トムラさんに迷惑をかけてしまったのだから。あのときトムラさんが助けてくれていなかったことを思うと、ゾッとする。深く深く沈み込む意識の中、私の心に光がさしたのは、手が触れたあの瞬間だった。
恐怖を知った。言いようのない恐怖。いや、思い出したのほうが近いかも＿＿
トムラさんはやっぱり、敵なんだ。そして荼毘さんはその仲間。私が彼らに関わるとき、私は用心しなければならない。自分のためにも、彼らのためにも。
いつから私は、こんなにも死柄木さんや黒霧さん、荼毘さんたちと深く関わるようになったんだろう。最初なんて、黒霧さんはバーのマスターかどうか聞いただけでも警戒心を顕にしていたのに。いつからこんなにも、私にとって大切な存在になっていったんだろう。
＿＿クビにされなくて良かった。
私はまだトムラさんたちのもとで働いていたい。これからはよく心にとめて生きないと。もうあんな失態はしない。失いたくないのだ。
学校の帰り道、まだ明るい時間帯だから油断していたのかもしれない。いや、していなくても私はたぶん逃げられなかった。
「＿＿こんにちは」
曲がり角を曲がってすぐ、そう声をかけられた。振り向くと、すぐ目の前に人が立っていて、私は驚いて後退るが、見ればその人は柔和な笑み浮かべた男の人だった。
「こ、んにちは」
誰だろう、と記憶を探るけれど思い当たる人物はいない。柔和な笑み、それが表面に貼り付けられた偽物のような予感がして、私はふと四肢を硬直させた。指先が震える。脳が危険だと警告を発する。
耳を澄まし、遠くから足音が聞こえてきたので、私は脱兎のごとく走り出した。もしも私が勝手に怯えているだけで、知り合いの人だった申し訳ない。あとで謝るから許してほしい。なんて言い訳を考えながら、足音のする方へ逃げる。誰かに助けてもらわなければという思いの中。
その人が追いかけてくる気配はないようだった。視線の先、足音の正体は上背のある男の人だった。私は弛緩した心でその人に声をかけようとした、その瞬間。
目の前の男の人がぐるりと振り向き、振り上げた拳で私の頭を殴った。
ぐらりと揺れる視界。地面に崩れる身体。
恐怖の色、黒色の花びらが、私の血とともに滴っていた。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
