第十五話 ページ16
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黒い穴から遅れてやって来た黒霧さんも、全身に泥を纏ったように疲れ果てていた。はっきりとしない顔の輪郭だが、どことなくその揺れが弱々しく、動きもぎこちない。
「……黒霧さん、大丈夫ですか」
と、腰にまわされた腕が強くなった。
黒霧さんから目を離し、お腹にしがみつくトムラさんの様子を伺うも、顔を見る事はできない。
「ト、ムラさん？ どうしたんですか、どこか痛いんですか」
トムラさんは返事をしない。私は不安になって、またトムラさんの頭を撫でるのを再開した。薄青色の髪に指を通し、指の腹でそっと触れる。元気を出して、私はあなたの味方です。そう心の中で呟きながら、撫で続けた。
「彼女に血がついてしまいますよ、死柄木弔」
黒霧さんが相向かいのソファに座り、トムラさんに言った。トムラさんはそっと顔を上げ、自分の服を見て、私の膝のあたりに少し赤いものがうつったのを確認すると、ゆっくりと顔を上げた。
「……」
トムラさんの瞳はがらんどうだった。だけどなんでだろう、こんなに悲しそうなトムラさんを見るのは初めてだった。
私は、そっと目尻をたらして、大丈夫ですよと首を振った。大丈夫ですよ、トムラさん。大丈夫。
トムラさんは目を見開くと、眩しいものでも見るみたいに目を細めた。
「それじゃあ……私はとりあえず、お風呂沸かしてきますね！」
パチン、と手を叩いてしんみりな空気に終止符を打つ。ハッと息を吸い込んだトムラさん、黒霧さんはいつもの紳士な様子に戻って「ありがとうございます」と言った。
お風呂を沸かすとき、手首のあたりに血が少しついていたので一緒に洗った。お風呂が沸くのを待つ間にお茶を入れた。トムラさんと黒霧さんはソファに沈んで静かにしているので、私も釣られて足音をたてないようにそろそろ歩きながら運んでいたら、トムラさんに馬鹿にされた。
気がつけばトムラさんの瞳に宿っていたギラギラしたものは消え失せ、代わりにそこには柔らかな何かがあった。
カタカタ窓が風に揺れる。
嵐の来訪、不吉な予感。
ざあざあと熱いシャワーの音を遠く聞きながら、私はぎゅっと白いリボンを握りしめた。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
