第二十話 ページ21
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「お茶、飲みますか？ 今日は日差しが強いので、熱中症になったら大変だなと思って持ってきたんです」
私の差し出した水筒をじっと見つめるトムラさん。私は思い当たって、慌てて付け加えた。
「あっ、水筒は私の私物ですけど、まだ口つけてないので、大丈夫ですよ！」
トムラさんはしばし見物するように私を見ていたその視線を水筒へ移し、やがてそれを手に取り、飲んだ。青白い喉が空にさらされて、ごくりと上下に動く。
「……うまい」
口の端から少しだけ溢して、トムラさんは言った。手の甲でそれを拭い、うっすらと目を細めるその様に、私は頭がグラグラ揺れるように感じた。
のんびりと帰路を歩きながら地平線上の空が次第に赤らむのを見た。
横を忙しなく何台かのパトカーが通り過ぎて、揺れるような音の変わり方を耳で受け取る。トムラさんはパトカーの威嚇するようなサイレンを気にもかけていなかった。私はふと、トガヒミコと名乗る女の子が言っていた『敵連合』という言葉を思い出した。
敵とは、ヴィランとは、ヒーローの対の存在だ。私だって知っている。常識の範疇でその人たちが危ない人たちだということも、もちろん知っている。
うすうす、気がついてはいたのだ。それを知らんぷりしていただけで、心の奥底にヴィランという単語はチラついていたのだ。
それでも、私はトムラさんと過ごす時間を大切にしていたいと願ったから、見なかった。聞かなかった。問わなかった、疑問を、地中深くに埋めて無かったことにした。
でもそれも、いつまで保つのかなんて、分からない。
「……」
嫌な思考を振り払うように、仕事に打ち込む私の横で、トムラさんはバーのカウンターに残っていた紫色の花びらをつまんだ。それはトガさんにナイフを向けられたときのもので、片付けたつもりが一枚残ってしまっていたらしい。
トムラさん、と声をかける寸前。
「…………チッ」
トムラさんはそれに指先で触れると、粉々にして一息で吹き飛ばしてしまった。私は口を薄く開いて、黒く滲んだ粉がバーカウンターに散らばる光景を、呑気にも魔法みたいだと思った。あぁほんと、魔法みたいだ。
「ごめんなさい、トムラさん。片付け忘れてました」
今や粉と化した花びらを集め、ゴミ箱に捨てる。トムラさんは、むすっと拗ねた子どもみたいな顔をしていたので、私は思わず小さく笑ってしまった。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
