第十九話 ページ20
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一人で歩いていて、ソフトクリームの看板が見えたとき、思わず私はくすりと笑ってしまった。甘くて冷たいソフトクリーム、幸せの味。
ショッピングモールへ近づくと、なにやら騒々しい気配が伝わってきた。人で賑わうショッピングモール、がやがやと騒音が粒になって包んでいる。
ふらふらとショッピングモールを歩いていたら、青白い顔をした男の人とその傍らで電話をかける女の子を見つけた。男の人がとても体調が悪そうだったのと、Tシャツ、というTシャツがあまりに印象的で私はふと足をとめるけれど、カップルらしき二人組は気がつけばどこかへ行ってしまった。
私は構わず先へ進む。奥へ奥へ、人の奥へ。
やがて、視線の先の遠くに黒いフードをかぶった背中を見つけた。
私は少しだけ小走りになって、その背中を追いかけた。宛もなく歩いていたけれど、運がいい、こんな人の群れの中でも意外とすぐに見つかるもんだ。
「……トム、ラさっ」
黒い背中は人の群れを抜け、建物と建物の隙間の道を曲がりかけたので、私は見失うすんでのところでその裾を掴んだ。ビクリと肩が震え、勢いよく振り向いたその目は爛々と光っていて、赤い光を発しているようだった。フードの奥に控える口元は歪に笑みを浮かべていて、ついさっきまで笑っていたのがわかる。
何か、良い事でもあったのだろうか。
「…………A？」
トムラさんは私を認めると、目を見開いて、私をまじまじと見た。赤い瞳にはまだギラついた敵対心が残っていて、それでも私は目の前の人物がトムラさんであることが胸にじわりと暖かく染み入るのを感じていた。
「黒霧さんに言われて探しに来たんです」
ふわり、場違いに花が咲いた。それは珍しい、瑞々しい新緑の花弁。私はそれがトムラさんの手に渡るのを見て、ようやく自分の心を自覚した。
「……緑の花びらは、安堵、です」
安堵、先回りしてそう伝えたら、トムラさんはよくやく、満ち足りたような表情になった。思っていたよりも私は、あの見知らぬ二人との接触に対して不安感を抱いていたらしい。トムラさんが居ない場で彼らに会うことを。ナイフの刃先を向けられたことを。
トムラさんは私の手首を掴むと、何も言わないままもう片方の手で頭を撫で、騒音から遠ざかるように、ショッピングモールを後にしたのだった。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
