陸拾陸ノ破壊【黒い笑顔】 ページ18
_No side_
鍵穴に鍵を挿すと、それは入った。ガチャりと鍵を回して中のものを見る。中には、何通かの手紙が入っていた。
Aはそれを懐にしまい、七篠に近付く。頬に触れると、それはまだ暖かかった。
ポートマフィアが来る前に……否、もう部屋に入ってきていた。
?「A…糞太宰から聞いたぞ。七篠名無、ポートマフィアの情報を奪い伝達する役目を請け負った奴…而もお前が其奴に情報を教えたとか」
Aより背の低い橙黄色髪の帽子を被った男……中原中也はそういった。Aは中也の顔を見ない。それどころか、俯いていて表情を読む事は不可能である。
中也「聞いてんのか?A」
中也はAの肩を掴み自分の方へ向けさせた。その顔は__涙を含んだ悲しげな顔だった。だが、同時に何か吹っ切れたような清々しい顔にも見える。
A「……彼がそう仰るなら、そうです」ニコッ
貼り付けた笑い。今迄、太宰に何を云われてもそんなことはしなかった故に、中也はAを心配した。
中也「だ…大丈夫か?」
A「?……其れより、彼を撃ったのは誰ですか?」ニコッ
一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、裏の黒い笑みを見た気がした。真っ黒で何も見えない。暗黒の笑顔。貼り付けただけの何も感じていないような笑み。
中也「ッ何があった?」
A「そうですか、あの人ですか」ニコッ
Aには何が聞こえたようで、中也の近くにいた男の目の前に行き、右手を肩に添えた。勿論手袋付きで。
すると男は悲鳴と共に崩れ落ちる。
A「良い度胸ですよね、彼に情報を渡せと命じた上で自ら殺すのですから。何処かの組織の間諜さん」ニコッ
方一部だけか手袋の上からでも灰と化した。如何やら怒りをもってすれば手袋在りしも関係ないらしい。
A「…すっかり日が暮れていましたね。帰らなければ怒られそうです。では、さようなら。中也」ニコッ
Aは笑顔のまま中也の部下を掻き分けて七篠の部屋を出た。その手には確りと手紙が握られている。
___
自室へ戻り部屋の鍵を閉めて手紙を読む。鍵を閉めたとて太宰には侵入を許してしまうだろう。針金さえあれば彼は鍵なんて簡単に開けることができるのだから。
だが、今のAはそんなこと如何でも良かった。七篠の残した手紙がポートマフィアに知られる前に読み切ると云う事以外、何一つ。
Aは手紙を開き、読み始めた。
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作者名:匿名F | 作成日時:2022年3月6日 20時