第9話 ページ9
海斗は 京ノ介が来るまでスマホをいじりながら廊下に立っていた。講義が早めに終わったせいで、言われた部屋の前に早く来すぎてしまったのだ。
立ち疲れで片足にかけていた重心をもう一方に変えることを何度か繰り返していると、廊下の端から 京ノ介が歩いて来るのが見えた。
「お待たせー」
「あ、こんにちは」
海斗が相手に挨拶をすると、 京ノ介はきまり悪そうな表情で謝る。
「付き合わせちゃってごめんね。授業が終わって帰りたいところなのに」
「俺は別に大丈夫ですよ」
「忙しかったら全然途中で帰っていいからね」
京ノ介は口を動かしながら借りてきた鍵を鍵穴にを差し込み、捻ってから扉を開ける。開けたまま抑えて先に 海斗を通そうとした。その気遣いに 海斗は軽く会釈をして足を踏み入れると部屋中のよどんだ、生ぬるい空気に眉をひそめる。
別の団体が使った後なのか、ダンボールや廃材が乱雑に積まれていて、その上には雪のように埃が積もっていた。ややカビ臭い空間と、目の前に広がる光景に言葉を詰まらせる。
「割と散らかってますね…」
「そうだよね。思ってたより結構汚いよね…」
困ったように互いに顔を見合わせたが、その息の合いように思わず 海斗は吹き出した。それにつられて 京ノ介も笑う。
「まずダンボールを出しちゃおうか。どうせ使わないだろうし」
と 京ノ介はぱらりと額に落ちた前髪をさっと払って、がらくたの山の側にしゃがみ込んだ。 海斗は棚に放ってあった梱包用ロープを手にして床に胡座をかいた。
「そういえば、もう他のサークルは見たかな?」
「気になるやつは見学しました。で、サッカーにしました」
「そう。高校もサッカー部だったもんね」
京ノ介はダンボールを分別しながら相槌を打ち、ある程度まとまったものを 海斗の前によこした。 海斗は渡されたダンボールを紐で括っていく。
「兼サーしてますか?」
「してないよ。割と忙しくなりそうだから」
… 恵那が聞いたら喜びそうな情報だ。教えてあげなくちゃ。
ふとそんなことが頭をよぎったが、それを誤魔化すように手を動かしながら 海斗は再び訊ねた。
「 京ノ介さんが作った理由って…」
「かっこいい理由とか大層な理由は無いよ。興味はあったし、面白そうだからっていうのと大学ならまだ可能性あるかなって思って。高校は設備が全然整ってなかったしね」
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タシャ(プロフ) - なつめみくさん» “かいと”です。何となくで設定したんですが、すごい偶然ですね! (2月15日 12時) (レス) id: 6d2c528b25 (このIDを非表示/違反報告)
なつめみく - まって名前変換の俺ってやつ元カレの名前と漢字同じだ!wまぁかいとかうみとどう読むかで変わるけど、、 (10月5日 19時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
タシャ(プロフ) - ゆいさん» すごい偶然ですね笑 閲覧ありがとうございます! (8月7日 22時) (レス) id: 6d2c528b25 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 名前設定した子が丁度サッカー部と吹奏楽部だったから一人で笑っちゃいました( ´∀` ) (8月5日 15時) (レス) @page7 id: c363f38072 (このIDを非表示/違反報告)
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