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隣の貴方*7 ページ8

季節の折々にて。


綺麗な言葉選びに秀逸なテンポの旋律。
和な曲調の動画はあっという間に終わりを迎える。


『〜〜〜〜っ最高…………』


ぶるぶると震える手に収まるスマホは、ループして2回目の再生を開始している。


『……まあまずは、本家に合わせて練習しよか』


んん、と喉の調子を調える。
いくら練習と言えどAfter the Rainの曲。中途半端に歌うなど言語道断。


『……_______』


きゅ、と終わった2回目の動画に合わせて、私の練習も終了。


『山紫水明、ね。分からない意味は調べてみるのもまた乙なものよね』


歌いたい、分かりたい、彼らの世界に私も踏み込みたい。
ぞくぞくと背中に電流が奔る感覚。
まだまだ追いつくには、時間が必要なのだ。




「あわ、投稿された…………」


瞬く間に増えていくコメント、マイリス。
有難いと同時に恐れも見え始めたその時。


僕の再生している窓とは少し異なる再生箇所が僕の耳に届いた。
少しだけ向こうの方が早いみたい。


まさか隣の人、僕達のこと知ってる人なのかな……まさか朝にばったり会っちゃったあの人?


窓を閉じて、隣部屋の壁に少しだけ、ほんの少しだけ身を寄せると。


『……_______』


たしかに僕達の曲。に、混じった、高く澄んだ……澄んだ声。


「……あ」


彼女の声、今日助けたあの女の子とそっくり……まさか御本人……? 僕らの事知ってたもんなあ……。


「へえ、新規の歌い手さんかな? いやあ、ドッキリっぽくてちょっとドキドキするなあ」


なんて間抜けなことを言ってると。

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作者名:孝音 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年8月18日 0時

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