【短編集】マイクを握れ【ヒプノシスマイク】

揉み心地/碧棺左馬刻(リクエスト) ページ4

｢あ〜♡やっぱAの胸は揉み心地最高だなぁ〜♡｣
｢充分でしょ？ほら帰らなきゃ｣

横浜にあるお洒落な居酒屋
完全に酔い潰れ、私を羽交い締めにしながら胸を揉んでる友人へ声をかけた
もうすぐ日付が変わってしまうというのに彼女はいい気分で酔っているのか帰ろうとする素振りすら見せない

｢まってぇ…もーちょっとぉ〜…｣
｢……はぁ｣

再び人の胸を揉んでは柔らかいだの揉み心地がいい、だの
久々に会った友人ではあるがこういう所は全く変わっていない
どうすると困っていた所、丁度、個室の戸が開いた
店員かと助けを求めようとしたがそこに立つ人物に私は唖然とした

｢……さま、とき？｣

ドクロが描かれたアロハシャツに不機嫌そうな赤い瞳
後ろにいる上機嫌な友人とは真逆の表情
私が何か言うよりも前に彼はぐい、と私の腕を引き友人から引き剥がす
あ〜、と玩具を取り上げられたかのように友人は不服そうに唇を尖らせた

｢会計しとけ｣
｢え？わっ……あ、ちょっと！｣

彼は私に財布を投げ、鞄も友人も纏めて軽々と抱え上げた
私の手元に残ったのは彼の革財布のみで、鞄も持っていかれてしまったから私の財布もない
仕方なく、左馬刻の財布でお会計を済ませて、店を出た
外の空気が案外冷たくて、酔いが回った頭に丁度いい
店の前には既に左馬刻が車をまわしていた
相変わらず不機嫌顔で車窓から煙草の煙を吐いている

｢左馬刻、私の鞄まで持っていかないでよお金払えない｣
｢あ"？だから財布渡したんだろ、ほら返せ｣

ずい、と伸ばされる手から逃げるように少し後ろへ下がる
先に鞄を返せ、と言えば嫌だ、と彼は即答した
お金が返せない、返さなくていい
と何度も同じやり取りが続く
ついに私が折れた
後部座席で横になっていた友人が、吐きそう、と声を漏らしたからだ
渋々、財布を返して私も後部座席へと座る
彼女の家に着くと、優しそうな旦那さんが慌てた様子で友人を引き取ってくれた
その風景もなんだか仲睦まじく見えてしまって、少し笑えてしまう

｢……ありがとう、左馬刻。でもお金はちゃんと払わせて｣

助手席に座って彼の横顔を見上げた
私の視線に気づいたのか、彼は私の方を向き煙を吹き掛けた
咳き込む私を彼はけらけらと笑う

｢金はいらねｪ。代わりに一つ｣
｢？…なに？｣

彼の手が私に伸びる
その手は迷うことなく私の胸を鷲掴んだ
数回揉んでから彼は手を離し煙草を持つ

｢……確かに、揉み心地いい胸だなｧ｣
｢！！……左馬刻のばか〜〜！！｣

腐った負け犬/山田一郎→←姉を想う故/山田一郎(リクエスト)

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