【 3 】アメジスト ページ3
【 3 】
「 これあげる。ボク、お菓子作りとか柄じゃないから。 」
ボクが手中を開くとキラキラと紫が輝いた。
「 宝石?綺麗やね。 」
「 [アメジスト]。ピアスにしてみた。エミさん、ピアス開いてるでしょ? 」
エミさんは恥ずかしそうに自分の耳たぶを触る。
真面目そうな感じなのに、実はやんちゃなエミさんがお気に入りだった。
「 有難う。バレンタインやから? 」
「 そ。どうせ誰からも貰えなかったんだろ? 」
「 あはは。お見通しやな。……それにしても、こんなに綺麗なの似合うかなあ。 」
エミさんは不安そうにアメジストを握る。
そしてボクが渡した手鏡と睨めっこしながら、自身の耳と格闘していた。
「 でもどうしてアメジストなん? 」
「 2月の誕生石だから。それに[愛の守護石]って呼ばれてるんだ、アメジストは。バレンタインにピッタリだと思ってさ。 」
「 愛の守護石……ロマンチックやな。 」
エミさんは髪をかきあげる。
その耳にはアメジストが馴染み、妖艶な香りを醸し出していた。
「 あとはね、[素敵な恋人を招き寄せる石]としてヨーロッパでは言われてる。だからエミさんにピッタリだろ? 」
「 それはピッタリやな。ありがと。 」
彼女が欲しそうな空気は感じていなかったけれど、高校生男子が欲しいのはやっぱり彼女だろう。
モテないことで有名なエミさんだが、実は隠れて好意を持っている女子が多いことでも有名である。
「 アメジストは枕元に置いておくと、安眠出来るらしいよ。ピアスは着けたまま寝てみたら? 」
「 アメジスト大活躍やん。ほんまに俺にピッタリやなあ。 」
「 因みにピアスにしたのは、アクセサリーにしたら創造力が高まるから。エミさんは自分の気持ちを表現するのが得意だろ?だからそうしてみた。 」
エミさんが本当に喜んでくれたのが照れ臭くて、ついつい饒舌になる。
それでもエミさんはボクが話せば話すほど、更に上機嫌になっていくのだ。
それも気恥ずかしかった。
「 太陽に当てると退色しちゃうから、あまり髪から覗かせないで。月に当てると綺麗に光るらしいよ。 」
「 夜の宝石かあ。ほんまにロマンチックや。 」
エミさんが「ありがと」と笑うから、ボクも「んー」と返した。
世界で1番、似合っていた。
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作者名:七瀬 波子 | 作成日時:2021年10月18日 7時