【 20 】真相 ページ20
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遠くからサイレンの音がした。
ボクはゴウトに緑のカーディガンを渡される。
それすら着る気になれなくて、ただ死んでいく彼を見詰めていた。
何が間違いで、何が正しいか分かりたくなかったから。
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「 つまり、真犯人は目立ちたかったんかな。別人を犯人にした手上げた技術を、褒めて欲しかったんかもね。承認欲求の塊やったって訳か。 」
ボクの手を優しく握るエミさんは、さっきから何も言えないボクに気を遣っている様子だった。
「 それにしても、ほんまに災難やったな。もっと早くに俺が気付いていたら、きっと彼は生きていたのかも。 」
悔しそうに拳を膝に載せたエミさん。
LINEに気付いてくれて通報してくれたのもエミさんだった。
「 最近、こんなんばっかやね。巻き込まれるにも程がある。大丈夫? 」
ボクは青い唇を上手く動かせなくて、頷いて示した。
エミさんも頷いて、警察署には沈黙が宿る。
「 警察はどうするんやろね、これから。 」
ボクはまた頷いた。
そしてゴウトを思い出す。
ゴウトはあの後、どうしたのだろう。
「 ボクと一緒に居た女の子は? 」
「 女の子……?居なかったけど、そんな子。 」
じゃあ、ゴウトは帰ったのかもしれない。
タフな子だから、警察の聴取が面倒臭くなったのかもしれない。
「 そうや、ずっと気になってたんやけど。Aさん、最近ひとりで話しとるよね。 」
「 ひとり? 」
「 何も無い空間に話し掛けてたりするやん。誰も居ないのに会話してるみたい。だから不思議やったんよ。どうかしちゃったんかと思って。 」
ゾワゾワして鳥肌が立ち、背筋が凍った。
大事な何かを見落としていた様な嫌な感覚は、ボクを逃がさない。
「 例えば? 」
「 今日。防犯カメラを見させて貰ったんやけど、Aさんひとりだったで。女の子も居らんかった。だけど声が変わったり、表情がまるで別人みたいになっとる。凄く不思議な光景やったんよ。 」
ボクは震えが止まらない自分を抱き締めた。
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伊東市干物店強盗殺人事件は実在する事件です。
被告人は死刑判決をされましたが、無罪を主張しています。
今回の真犯人はあくまで創作上のモノです。
是非、実際の事件を調べてみてください。
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作者名:七瀬 波子 | 作成日時:2021年10月18日 7時