【wrwrd!】シェリアク【em】 (ページ12)

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【 12 】不死身ページ12

【 12 】
　
　
　グリゴリー・ラスプチーン、ロシアの僧侶。
　暗殺されても生きていたと言う摩訶不思議なエピソードを持ち、青酸カリを盛られても、心臓を撃たれても死ななかった。
　だけど最終的には川に捨てられた事による溺死でこの世を去る。
　
　
　「エミさんは彼みたいだ。まさかたった1週間で退院してくるなんて。」
　「奇跡やな。ほんまに神様に助けて頂いた。もしかするとお姉ちゃんが護ってくれたんかも。」
　
　
　何食わぬ顔をして体育に参加しているエミさんを眺めながら、あの日の事を思い出していた。
　
　ボクが行ったと同じタイミングで救急車が到着し、エミさんは直ぐに搬送され犯人は逮捕された。
　お姉さんのストーカーをしていた事も認めた犯人は、エミさんと同じクラスの男子生徒。
　どうやらエミさんと彼は同じ中学出身だったらしく、お姉さんに密かに恋心を抱いていた彼だったが、交際相手が居ることに激怒しストーカーとなったらしい。
　そしてあのボクが行っていた舞踏会に彼も居たらしく、それに気付いたお姉さんが扇子言葉でSOSを出したのだ。
　嫌がらせを行っていた事も確認された。
　そして碇草を送っていた事、眼鏡を壊した事も認めたそうだ。
　
　だけど問題はそこじゃない。
　青酸カリを盛ったことは否定したそうだ。
　じゃあ、誰が盛ったのか。
　ボクはエミさんを真っ直ぐに見た。
　その鬱蒼とした横顔に、問い掛けたかった。
　
　
　「女って、怖い？」
　
　
　エミさんは虚ろな瞳を揺らす。
　ゆっくりと呼吸をしていた。
　
　
　「ロシアに、行きたい？」
　
　
　この質問、前にもした気がする。
　だけどエミさんは答えなかった。
　
　
　「本当に心不全かもしれない。青酸カリが関わっているかどうか、一般人のボクにはどうにも出来ない。だけどもしそうなら、ボクに話して欲しい。誰にも話したりはしないから。」
　
　
　エミさんはボクを見て微笑んだ。
　
　
　「俺を疑ってるん？」
　「そんなんじゃないけど…… 」
　「お姉ちゃんは心不全やった。それだけやで。物騒な事を考えるのは終わりにしよう。」
　
　
　ボクは何も言わなかった。
　エミさんも何も言わなかった。
　ただ握った手があまりにも冷たくて、その手に息を吹き掛けた。
　エミさんは擽ったそうに笑う。
　ボクも同じ様に笑ったけれど、エミさんの目が笑っていない事を知っている。