彼の様子がおかしいので、尾行してみます。【木村良平】

今日の現場はなんだかうるさい。 ページ12

『おはようござい「Aちゃん来たよ、神谷さん！！」


……小野さん？』


現場に入るなり、小野さんがわたしの到着を神谷さんに知らせる。


「ちょ、小野くん、うるさい。っていうかA、なんで事務所に顔出さないの！？


どんだけ心配したと……っ」


なぜこの人はわたしが1週間事務所に顔を出さないだけでこんなに心配するのだろう。


『もう神谷さん、過保護すぎですよ〜？』


「だって！4日間ぐらいならまだいいけど！1週間も顔見ないなんておじさん心配しちゃうもん！」


うわぁ、神谷さん、ファンの子ならかわいー！ってなるかもだけどもんはないですよ、もんは。


「神谷さん、Aは諦めて俺にしませんか？」


「うわ、こっちくんな気持ち悪い！それにAには良平くんがいるじゃん！


もともと諦めてんだよ、ばーか！」


神谷さんのその一言で現場を凍らせた。


「神谷さん、そのことはちょっと……」


珍しく小野さんが焦りながら言った。


のぶから聞いた話、良平さんの浮気は業界のスタッフさんたちも察しているらしい。


なんでも、わたしのいない現場で良平さんは由紀ちゃんにべったりだからだそうだ。


「……さっさと終わらせましょう？」


良平さんがそう言ったので、この空気は皆嫌だったのだろう。


予定よりだいぶ早い収録が始まった。


収録が終わり、小野さんに飲みに行こ〜！と言われ、無理やり現場から連れ出された。


小野さんに言われるがまま居酒屋に入ってビールの頼む。


「ねぇAさぁ……。辛くない？大丈夫なの？


このままだと木村くん、浮気止めないよ？


もう別れた方がいいよ、それがAのためだ。」


小野さんに言われなくてもわかってる。わかってるけど……


『わたし、だめだめなんです。良平さんを信じないで浮気してるって思って。


挙げ句の果てにはのぶと良平さんを尾行して。


わたしが浮気してるんですかっていう一言を言えば誰にも迷惑をかけないで済むのに。


それにもちろん辛いですよ？だけどーー


まだ好きなんです。だから、別れたとしても、もう一生恋なんてできない気がするんです。』


小野さんは呆れたような顔をしてにこっと笑った。


「あぁ！もういいよ！なんなら木村くんからA奪っちゃおっかなって思ったのに！」


『小野さんと付き合うならのぶと付き合いますよ』


「ひどいよ〜、神谷さんもAも！」


その日は小野さんをいじりながら楽しい時間を過ごした。

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