スイーツ大好き系男子とわたし。【岡本信彦】

奇跡の逸材 ページ8

「アローラ・グリーン役の沢城みゆきです。

この現場では、新人さんも多いので、先輩としてアドバイスも頑張っていこうと思っています。」


……うん、ベテランの風貌。さすがとしか言いようがない。

そんな沢城さんを見て、次の岡本さんがあたふたしながら、立ち上がった。


「岡山翠役を務めさせていただきますっ、岡本信彦です！！

まだまだデビューしてからちょっとしか経っていない新人ですが、頑張ります！」


凄く緊張してる岡本さんを見て、関係者さんたちはくすくす笑っている。

そんな中で。一番笑っていたのは良平さんだった。


「のぶ緊張しすぎだろ〜。ほら、見て。Aちゃんの方が落ち着いてふふっ……いたたっ

やめてよ美沙！いやいやいや、本気すぎるわ！」


「良平さん！のぶをからかうのはいいとして、Aさん巻き込むのはやめてあげてください！！」


わたしはつい、ぽかんとしてしまった。だって、あのお淑やかな河瀬さんがこんなことするなんて思わなかったから。


「あ、ごめんね。Aさん、挨拶始めちゃっていいよ！」


『え、あ、はい。』


こんな唐突に自分の番が来たので、考えていたとはいえ、焦ってしまう。


『御室美咲役、AAです。ちゃんとした役は初めてなので、皆さんについていけるか心配ですが、よろしくお願いします！』


わたしの挨拶に、監督さんは感心したようだった。


「さすが、養成所時代に奇跡の逸材って言われただけはあるね。

……まだあまり演技を見たわけではないけれど。」


"奇跡の逸材"。わたしは、養成所時代にそう呼ばれていた。

別に、可愛いヒロインみたいにぼっちだったとかそんなことは全くと言ってないけれど。

ただ、持っていた才能が演技だったってだけ。


そんな、崇められるものではなかった。

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