うしろのしょうめん (ページ32)

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episode31 ページ32

私は潮江さんにそんな事を言われるなんて思ってもいなかった
「えっ」
「まぁ、クナイを持っていればいずれ記憶をまた思い出すかもしれないし、それはいい案だね」
善法寺さんもウンウンと頷いていた、私に拒否権と言うものは無いのだろうか…
「…弱いままは嫌じゃないのか？」
「……私は、弱くなんかないです」
私は潮江さんのその一言で、鍛錬に向けてのやる気が湧いてきてしまった、我ながら単純だなと思った
「なんなら留三郎か小平太にも手伝ってもらうと言い、文次郎も付きっきりだと委員会もあるし大変だろう？」
「それもそうだな…留三郎に頼むのは嫌だか…」
善法寺さんは食満に頼んでおくと言い稽古場を出た

「鍛錬かぁ…」
あの時、何が足りなかったのだろうか、経験の違い？私が女だから？じゃあどうして私はあの後あんなに戦えたのだろうか？
「…くしゅんっ！」
ぼーっと考えていたくしゃみが出てしまった、最近肌寒いから早く寝ないと、湯冷めしてしまう私は布団に潜り今日の事はまた明日考えることにした
次の日の朝、私は食堂へとおばちゃんのお手伝いをしに来ていた
「これ、みじん切りにしてちょうだい」
「分かりました」
最近まで料理本を読んでいたので、だいたいの包丁の切り方がようやく分かったところだった
「これ、全部よそったらいいですか？」
「そうね〜もうすぐ皆起きてくる頃だろうから、よろしくお願いするわね！」

私は作業が一通り終わったのでお椀にご飯を盛り付けた
「ふぅ…」
丁度装い終わった頃生徒達がぞろぞろと集まってきた
「おばちゃん〜Aランチ1つ〜！」
「はーい」
私は相変わらずまだ食の味が分からないので真っ白なご飯を三角のおにぎりに結んでいた
「Aちゃんも、そろそろ作業終わりにしてご飯先に食べちゃって！」
「すいません、任せっきりで、後お願いします」
私はおにぎりを持ち、善法寺さんのいる所へと向かった
「…お待たせしました」
「またおにぎりだけかい？」
「はい」
食べ物の味が分からない事はまだ誰にも言っていない、余計な心配をかけたくないからだこれくらいは自分で解決しなければ…
「お残しは許しませんで〜！！」
今日もおばちゃんの元気な声が食堂に鳴り響く、私はその声を聞きながらおにぎりを頬張った