値千金【冥冥】 ページ10
.
「 A、朝だよ。 」
可憐な声が耳元で咲いて、私の眠気が一気に飛ぶ。ぼやける視界の隅には銀白色の美しい髪が見えて、朝日でキラキラと輝く。
顔を近づけられれば、その長い絹のような髪がはらりと落ちてくる。
「 冥冥さん、おはようございます。 」
「 おはよう。あまり起きるのが遅かったら料金が追加されるところだったわね。 」
「 …そう、ですね。あはは。 」
私、A19歳。とある美人な方の豪華なおうちに居候しています。
尚、ここまでに至った経緯は省かせていただく。
そして今は美人こと、冥冥さんのお声による私のお目覚めだった。
「 憂憂、おはよう。 」
「 お姉様おはようございます。A、おはよう。 」
下に降りれば弟君の憂憂。そして並べられた豪華かつ健康的な朝食。
ここにきてから私の生活習慣は激変した。
また、私の労働時間もガラリと変わった。
「 …今月はAがワガママを言ってくれるおかげで私の手元が豊かになるね。 」
冥冥さんと私のルール。
それは私がここに居候させてもらう代わりに、冥冥さんにお金を払う事。
また日常生活のあらゆる場面で私が冥冥さんに"お願い"をすれば、それは"追加料金"として支払う義務がある。
先ほどで言えば、一緒に寝てもらい起床時に起こしてもらうお願いの代わりに何万といったお金がとぶ。
「 フフッ、まあそれはさておき。A、こちらへおいで。 」
冥冥さんの座る隣へと手招きされ、隣へ座れば綺麗に彩られた爪先が私の唇をなぞった。
「 考え事かしら?いつもの可愛い顔が台無しじゃないか。 」
「 !い、いえそんな。 」
不敵に笑い弧を描くその唇に目が奪われる。
ああ、これも追加だ。
今日も冥冥さんを見届けて、日が落ちれば仕事に行ってやりたくもない商売をしてお金を稼ぐことになる。
けれど、苦ではなかった。
彼女にこうまでしてもらえて、彼女にお金を尽くして、私は幸せ者なんだ。
そう脳が肯定して、私は洗脳状態へと陥る。
「 ただ。冥冥さんの側で、貴方様にお金を捧げることができて幸せだな、と。そう考えていただけですよ。 」
唇に当てられていた細い指は私の顎の輪郭をなぞって、線の綺麗な手に顔を包み込まれる。
「 私もとても幸せだよ。金ももらえてAに触れることができて。 」
その言葉一つ一つにまた酔いしれて、お金を稼ぐだけの人形に成り果てていく私は滑稽だった。
.
228人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麦芽糖(プロフ) - 舞香さん» ありがとうございます!更新頑張りますのでこれからもよろしくお願いします! (2021年2月17日 9時) (レス) id: 590a187e25 (このIDを非表示/違反報告)
舞香(プロフ) - め、めちゃくちゃ好きです……!こういうのを求めてました…!これからも頑張ってください、応援してます!! (2021年2月16日 21時) (レス) id: 26fd9ad117 (このIDを非表示/違反報告)
麦芽糖(プロフ) - yuunaさん» リクエストありがとうございます。また書けそうでしたら書きますので、しばらくはリクエスト停止させていただきます。いつも読んでくださりありがとうございます(^^) (2021年2月16日 19時) (レス) id: 590a187e25 (このIDを非表示/違反報告)
yuuna(プロフ) - とても面白かったです!またリクエスト失礼します!高専五条がメンヘラで一般人夢主が文ストの太宰治みたいな性格で浮気性なのが見てみたいです!! (2021年2月16日 19時) (レス) id: a73b6209c2 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - ナナミンがメンヘラ見たいです (2021年2月15日 16時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:麦芽糖 x他1人 | 作成日時:2021年2月15日 7時