誰か世界を変えてくれ！【ヒプマイ】

変革22 ページ26

前略。



左馬刻さんがわりと家に帰ってくるようになった。

最初は気まずかったけれど、最近は一緒にご飯を食べて、学校の愚痴を聞いてもらえるくらいの関係にはなった。


ラップの方も教えてもらった。でも、わたしはラップの才能がないらしく、てんでだめだった。どんな言葉をひねり出しても左馬刻さんをあきれさせるだけだった。

それでも懇切丁寧に教えてくれた左馬刻さんはヤクザにしてはやさしい。ヤクザにしてはだけど……。


今も絶賛左馬刻さんに愚痴ってる。


「それで、聞いてくださいよ〜！左馬刻さん。山下の奴がぁ〜！」

「はいはい、それ先週もきいたぞ。確かそいつ自家用ヘリで学校来たんだっけ？」

「それだけじゃないんですよ！！今度はイケメンの使用人いっぱい侍らせて身の回りの世話全部やらせるんですよ！まあ、別に左馬刻さんの方がイケメンだから悔しくはないけど。」

「何で俺様を張り合いに出すんだよ。」

「それで！！」

「無視かよ。」

「そのあと山下が『あなた方は使用人の一人も連れてこられないなんてかわいそうね。オホホホホ。』とか言うんですよ！」

「マジかwリアルでオホホとか言うやついるんだな。」

「いや、うちの学校いっぱいいますよ。」

「やべぇなお前の学校。」

「でしょ。」



こんな下らない話できるくらいには仲良くなった。ひとしきり笑ったあとで左馬刻さんが思い出したように言った。


「あ、そうだ。これから一月くらい組の方が忙しくなるから帰れねぇわ。前みたいに風邪引くなよ。」


「引きませんよ！私のことなんだと思ってるんですか？」


「幼稚園児」






このときは笑っていた。
でもまさか、これがこのあと起こる大事件の幕開けだなんて思ってみなかった。

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